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日本代表 8年前

土壇場で遅れを取り戻した「フラット3」。トルシエが築いた土台。潮流に合った戦術変更【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

「ジーコは私の遺産を食いつぶすだろう」

2002年W杯ロシア戦のスターティングイレブン。右から松田、宮本、中田浩二によるフラット3がラインの高さを変更した
2002年W杯ロシア戦のスターティングイレブン。右から松田、宮本、中田浩二によるフラット3がラインの高さを変更した。

 韓国が4位になったことで、日本のベスト16はさほど高い評価をされなかったが、ワールドカップ出場2回目でベスト16は十分快挙といえる。開催国として組み合わせに恵まれていたのは確かだが、ファウルも被ファウルも最多の日本は球際で戦い続けていた。

 当時話題になった選手たちによる戦術変更も、ラインの位置を変えたマイナーチェンジにすぎない。機能性はラインの高低にかかわらず同じなので、トルシエ監督が築いた土台あっての話である。トルコ戦での采配の混乱などはあったが、大きな仕事をした監督であったことに変わりない。

 トルシエ退任後、ジーコが新監督に就任。トルシエは「ジーコは私の遺産を食いつぶすだろう」と不吉な予言をしていたが、それは半ば的中することになる。ジーコ監督はサッカー観もチーム作りも前任者とは対極といっていいぐらいで、食いつぶすどころか前任者の遺産には目もくれなかった。

 長く続いていた、先行するヨーロッパを中心とし た戦術にキャッチアップするという姿勢もとっていない。理想の戦術を定めて邁進するのでなく、現在ある選手の力量を信頼して、今そこにある能力を発揮させることを優先した。

(文:西部謙司)

【了】

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