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Jリーグ 8年前

最下位転落も貫く「湘南スタイル」。次のステップに向け、監督と経営者が共有するビジョン

text by 藤江直人 photo by Getty Images

眞壁会長が口にした自責の念と責任感

曹監督が辛抱強く起用してきたMF神谷優太
曹監督が辛抱強く起用してきたMF神谷優太【写真:Getty Images】

 遠藤に加えてキャプテンのMF永木亮太(現鹿島アントラーズ)、守護神・秋元陽太(現FC東京)らが抜けた今シーズンは、開幕前から苦戦を予想する声が強かった。

 それでも曹監督は、ルーキーのU-19日本代表MF神谷優太(青森山田高校卒)をリーグ戦で13試合にわたって辛抱強く起用。チームの方向性が決め手になったのか。高校ナンバーワンのセンターバックとして評価の高い杉岡大暉(市立船橋高校)の加入も決まっている。眞壁会長が続ける。

「これまではある意味、テーマが明確だからこそ必死にやってこられた。J1に昇格しなきゃいけない、残留しなきゃいけない、だから登るんだ、と。だからこそ、これからはどのようにして登るのか、という話をしなきゃいけない。背負っている酸素の量が足りなければ、増やさなきゃいけない。甲府さんや新潟さん、鳥栖さんみたいに1県1チームという状況ではないけれども、だからといって他のクラブにできてウチにできない、ということはない。

 乱暴な言い方になるけれども、最多(のJクラブがある)県のなかでどのようにして登っていくかというのは、(カテゴリーが)J1でもJ2でも変わらない。それが見えたうえで次を目指さないと、おそらくお客さんも支援者も増えない。これは新たなテーマですよね」

 酸素とは、要は予算を意味する。FC東京に勝利し、悲願のJ1残留を決めた昨年10月17日。味の素スタジアムの取材エリアで、眞壁会長は頬に涙を伝わせながらこんな言葉を残している。

「曹(監督)をはじめ、選手には感謝しています……ただ、感謝だけでは申し訳ない。湘南というクラブのためにまだできていないことがたくさんあるので、体を張って……」

 ただ、現実問題として主力が移籍した穴を埋められるだけの補強は、外国人選手を含めてできなかった。残留争いをしている名古屋グランパスがDF田中マルクス闘莉王を復帰させたような、シーズン途中でのカンフル剤も現時点で打つことができたとは残念ながら言い難い。

 アビスパ戦後に漏らした眞壁会長の言葉には経営トップとしての自責の念と、現場の回転数に合わせるように車輪の回転数をアップさせていくことへの責任感とが凝縮されている。

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