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Jリーグ 8年前

「外国人枠」拡大はJリーグの成長につながるか。ドイツという手本。保護と競争のバランス

text by 藤江直人 photo by Asuka Kudo / Football Channel , Editorial Staff , Getty Images

才能を逃さないDFBのシステム

 DFBの主導で結成されたプロジェクトチームはピラミッドの頂点となるA代表の集中強化ではなく、中長期的な視野に立って、ピラミッドの裾野となる底辺部分の根本的な改革に着手する。その第一歩が、ドイツ全土に計366ヶ所にわたって設立された育成センターとなる。

 施設そのものはスポーツシューレなど既存のものが利用されたが、たとえば人口わずか数百人規模の小さな村にまで目配せが可能になるネットワークを構築。将来を嘱望される子どもや一芸に秀でた子どもがいれば、すぐにDFBがピックアップできるシステムを作り上げた。

 いくつかの育成センターを統括するコーディネーターが地域の指導員と連携して、毎週末に行われる試合をこまめにチェック。目についた子どもたちが原則として月曜日に育成センターに集められ、DFBから派遣される指導者から個々の長所をさらに伸ばすメニューを与えられる。言うまでもなく、指導者は最上位となるS級ライセンスを所持している。

 さらに、ピックアップされたなかでさらに有望と見込まれた子どもたちは、今度は地域選抜として次のレベルの指導を受ける。366ヶ所の育成センターは実は20前後の地域に分けられていて、年間に6回程度、一堂に会して年代ごとに試合を行う。

 ここでもDFBや地域協会の技術委員が目を光らせ、そこにプロクラブのスカウトやエージェントたちも加わる。こうして育成センターと地域選抜の2つのハードルをクリアした子どもたちが、いわゆる「エリート」と呼ばれるようになる。そして、DFBは「エリート」の育成をブンデスリーガの各クラブに義務づけるシステムをも構築した。

 当然のことながら、DFBから求められるハードルも高くなる。たとえば選手寮。個室が完備され、栄養がしっかりと計算された食事が提供され、地域の学校と綿密に連携し、家庭教師による補習体制も整い、親代わりとなる寮長夫婦がいる生活環境が何よりも求められた。

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