為末大さんに問う、アスリートとメディアの理想的な関係。選手は守られすぎている【INTERVIEW】

2017年03月03日(Fri)10時19分配信

text by 海江田哲朗 photo Editorial staff, Getty Images
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アスリートの触れて欲しくない部分に記者は踏み込むべき?

――アスリートのなかには「為末さんだからできるんじゃないですか」と感じる人もいるかもしれない。

「僕が中学生のときに受けたインタビューがNHKに残っていて、少年時代は吃音というかスムーズにしゃべれない癖があり、しどろもどろになっているんです。若い選手には、いつもそれを見せるようにしています。基本、トレーニングでその人なりにはなんとかなる。やはり得難い経験をした人間は、しゃべる義務があると思います」

――じつは面白く話せる能力があるのに、芽を摘んでいる可能性も。

「そうなんですよ。いまはSNSが普及し、全部開けっぴろげで壁なんてつくれない。だったら、サバイブする方法を身に着け、どんどん磨かれようよと。傷だらけのブランディングはそのやり方のひとつ」

――フジテレビの『とくダネ!』でコメンテーターのお仕事をされていますね。あれは思考の瞬発力が相当要求されるのでは?

「僕にとってはトレーニングの貴重な場です。瞬間的になんらかの見解を出し、しかもそれが一般的な見解だったらそこにいる意味がない」

――置きにいくボールは投げない。

「マイナー競技出身というところから来ているんでしょうね。僕は自分のいる場所にあまり価値がないって思っていて、自分から攻めに出ないと社会から価値を見出してもらえないという焦りや癖が抜けていないのかもしれない」

――それぞれポジションがあり、邪魔にならない人、潤滑油の役割を果たす人も大事なんでしょうが。

「おそらく、そういう場所をやるには、あまりフィットしないタイプなんじゃないかな」

――取材者と被取材者の関係について聞かせてください。書き手は選手の本質に迫りたい。だが、相手にも事情があり、触れてほしくないところがある。そのへんアスリートの立場からはどうなんですかね。競技者としての本質に深く関係しているなら、こっちは踏み込みたいんですよ。

「僕は引退して、アスリートをサポートしつつ、メディアの側にも立つ人間です。その立ち位置からすると踏み込むべきだなと思います。それを許容するのは選手の果たすべき役割のひとつ。選手を辞めて、気がついたことがあるんですよ。現役のときはいやだなと感じたとしても、そのアウトプットを10年後振り返って、まだいやなふうに見えているかというと、これはまた別の話なんですよね。当時の自分では気づかなかった魅力が出ている可能性がある」

――他者の視点が引き出す魅力。

「つまり、若い頃は自分の感性だけで全部判断すると、アウトプットが深まらないということ。大人が『おまえはそれをカッコ悪いと思うかもしれないけど、こういうものを出しておくカッコ良さがあるんだよ』と教えてくれる」

――余計なお世話と言われそうな気もしますが。

「あのときは不本意な姿をさらけ出してしまったけれども、あとになってカッコ良さや美しさあったんだなと気づく。そんな感じですかね」

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