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為末大さんに問う、アスリートとメディアの理想的な関係。選手は守られすぎている【INTERVIEW】

かつてメディアとスポーツは共闘、共存の間柄だったはずだが、その関係性が変貌してきている。アスリートのマネジメント会社からの高額なギャラ要求、高圧的なゲラチェック。それに伴って、本質を描こうとする書き手も減る傾向にある。メディア側の問題も見過ごせない。今後スポーツノンフィクション、サッカーライティングはどこに向かうのか。五輪でも活躍した元陸上選手の為末大さんのインタビューを『フットボール批評issue14』(11月7日発売号)から一部抜粋、編集してお届けする。(取材・文:海江田哲朗)

text by 海江田哲朗 photo by Editorial staff, Getty Images

取材される側から取材する側へ、為末さんの変化

元陸上選手で、現在は多方面で多活躍する為末大さん
元陸上選手で、現在は多方面で多活躍する為末大さん【写真:編集部】

「歌は世につれ、世は歌につれ」。世の中の変化によって歌は変化し、歌の変化に世の中も影響を受ける。歌は世情をよく反映しているという意味の慣用句だ。歌を、サッカーに置き換えることも可能に違いない。

 昨今、サッカーの取材現場ではさまざまな変化が起きている。選手とメディアの関係性、紙媒体の減少にともなうメディアの再構築。それまで常識と考えられていたものがいつの間にか上書きされ、物事の基準があやふやに感じられることも少なくない。

 今後、サッカーライティングはどこに向かうのか。サッカー界の事情に終始するのではなく、スポーツ全般に視野を広げてみると違った眺めが浮かび上がるように思う。

 為末大さんは400メートルハードルの競技で、オリンピックに3大会出場。引退後はアスリートのサポートをはじめ、豊かな知見と発想力でメディアを通じての活動も盛んだ。スポーツとメディアの関係性、スポーツノンフィクションの可能性を探ってみたい。

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――今日はスポーツとメディアの関係性について、聞きに参りました。まず、為末さんの現役時代の異名「侍ハードラー」というのは、どのメディアの仕事なんですか?

「最初に背景を説明すると、僕らの世界は放っておくとTBSがキャッチフレーズを付けるんですね。当時、僕はサニーサイドアップというマネジメント会社でお世話になっていて、多少コントロールが必要なのではないかとマネージャーが調整し、双方納得するところに着地させたといった具合です」

――それが現在の個人事務所「株式会社 侍」につながり、わりと息の長い付き合いに。

「社員からは『領収書がもらいにくい』という声もあり、いろいろと苦情を受けていますが、いまさら変えるのもお金と手間がかかりますから」

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