例え日本語でも…積極的なコミュニケーションで勝ち取った信頼
なぜ短時間で守備対応が大きく改善されたのか。そこには鈴木がタラゴナ加入当初から取り組んできた努力の成果があった。
鈴木の右隣、3バックの右で先発したのは経験の浅い22歳のカメルーン人DFモハメッド・ジェテイだったが、前半から右サイドバックのように振る舞って後ろのスペースのケアをおろそかにしていたうえ、自分の後ろを鈴木にカバーするよう要求していたという。
だが、中央にどっしり構えていなければならない鈴木にとって自分の横の広大なスペースをカバーするのは難しい。だからこそ「もっと中へ絞って守備をしろ」とジェテイにも要求をぶつけた。
スペインでは日本と違い、自分の意見を持って主張しなければ、相手の主張を受け入れるだけになって信頼を獲得できない。
鈴木はタラゴナ加入当初から、特にピッチ上で日本語であっても声を出すことを意識し、相手と言葉が通じなくても、表情や仕草で自分の意思を理解してもらうよう努めた。
しっかりと自分の考えを主張すれば、相手もそれに対して応えてくれるという感覚がつかめ、スペイン語を覚えるにつれてチームメイトとプレービジョンを共有できるようになった。今では地元メディアのスペイン語インタビューも問題なくこなす。
鈴木の弛まぬ努力によって、ヨーロッパにおける“日本人センターバック”のイメージも変わっていくかもしれない。体格で劣ることもあり、センターバックはGKと並んで過去に海外のトップリーグで成功を収めた選手が最も少ないポジションのひとつだった。
現在は吉田麻也がプレミアリーグのサウサンプトンで活躍しているものの、それに続く選手はなかなか出てきていない。ゆえに2部とはいえ、3バックの中央という単純な守備力だけでなく高い統率力や豊富な経験値が求められるポジションを任されるようになった鈴木の一歩は大きな意味を持つ。