フットボールチャンネル

鈴木大輔が切り開く日本人CBの新境地。スペイン2部残留へ、実りつつある努力の成果【海外組の真価~日本人選手の現在地】

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「日本人CBは欧州で通用しない」という壁への挑戦

 本人はサラゴサ戦を終えて状況に応じたラインコントロールや周囲への指示出しなどに課題を見出している。「(右と中央では)強度が違った。そして自分が最後になる。結構マンツーマン気味につくこともある」と、中央でのプレーに要求される強度や責任を自覚するようになった。

 昨年1月のタラゴナ加入から半年間は言葉も文化も違う新しい環境に飛び込み、好調なチームの流れに乗って、ただがむしゃらに周りに戦いを挑んでいった。

 ただ今季は、序盤から苦しい戦いを強いられ、主力の1人として日々噴出する課題を一つ一つ解決しながらバランスを見出す難しい作業の中でプレーの幅を広げて強さも増した。チームの成績と裏腹に安定感と緻密さを兼ね備えた鈴木の守備への評価は高い。サラゴサ戦後も地元メディアが「スズキは素晴らしいね!」と次々に声をかけてきた。

 “勝ち方”がわかればこのチームは変わる。

 そんな確信を胸に臨んだサラゴサとのアウェイゲーム。タラゴナは殺気を感じるほど異様な雰囲気の敵地で相手に飲み込まれず勝ち切り、鈴木も新境地を開拓した。ついに降格圏からも脱出した。

「(守備は)徐々に徐々によくなり、結果が出たので良かった。(自分のところから)もう少し安定感をもたらせればなと思っています。一発のカウンターでチャンスを作られないように、もう少し人を動かしてやっていけたらいいですね」

 課題を口にする鈴木の表情は充実感に満ちていた。まだ2部だが「日本人のセンターバックはヨーロッパで通用しない」という壁を、自らの持ち味であるパワフルさ全開で突き破ろうとしている。

(取材・文:舩木渉【サラゴサ】)

【了】

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top