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Jリーグ 7年前

福島ユナイテッドが挑んだ「3.11」開幕戦。「福島に来たら福島の人間」、田坂監督が見せた涙の意味

text by 舩木渉 photo by Wataru Funaki

田坂監督が見せた涙。福島のクラブを率いる覚悟

田坂和昭
田坂和昭監督は記者会見で涙を流し、胸の奥から言葉を絞り出すように福島への想いを語った【写真:舩木渉】

 そして迎えた2017年のJ3開幕戦。シーズン初めの重要な一戦は、奇しくも福島県にとって特別な意味を持つ「3月11日」に組まれた。

 この日が持つ意味を問われた田坂監督の目には涙が浮かび、その口からは熱い想いがあふれ出た。

「まずこの日にちに開幕を迎えるということで、すごく自分の中で考えさせられました。なぜかというと、私は実際、震災に遭ったわけではないです…けど…いろいろな人に福島の話を聞いたり……スタッフの中でも(被災した人が)います。選手にもいます…すみません…(涙で言葉に詰まりながら)。

そういう中で開幕戦を迎えるということで、何としても勝たなければいけないなと。もちろん今のユナイテッドを支えてくれているスタッフの中で、苦しい思いをして今日まで支えてくれた人もいます。私の今までの選手時代も監督経験の中でも、本当に今日は勝ちたい試合で、いままでにはなかったんじゃないかと」

 田坂監督は広島県出身で、プロ選手としてはベルマーレ平塚(当時)や清水エスパルス、セレッソ大阪でプレーした。指導者として大分トリニータや古巣の清水を率いた経験を持つが、東北地方に縁はない。今季初めて福島の地でJリーグのクラブを指揮することになった。

「シーズンまだ最初なんですけど、この一戦にかける思いには並々ならぬものがありました。私自身も本当に、何度も言いますけど、私は震災に遭っていないですけど、福島に来た限りは福島の人間だと思っていますので、この試合に勝てたことはうれしく思います。今日みたいな気持ちを前面に出して今シーズンを戦えたらと思います」

 まだ福島で指導をし始めて2ヶ月ほどにもかかわらず、「福島に来たら福島の人間だと思っています」と話す田坂監督の顔からは相当な決意と覚悟がうかがえた。被災地のクラブが果たすべき使命を心に刻んで戦っている。

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