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Jリーグ 7年前

福島ユナイテッドが挑んだ「3.11」開幕戦。「福島に来たら福島の人間」、田坂監督が見せた涙の意味

text by 舩木渉 photo by Wataru Funaki

いつか花咲く日まで。福島ユナイテッドは種を蒔き続ける

内藤友康
震災当時のチームを知る内藤友康は、いまも福島でサッカーができる幸せを噛み締めている【写真:舩木渉】

 福島ユナイテッドFCが、被災地となった地元のために果たすべき役割とは何か。初めての「3.11開幕戦」を経て、内藤だけでなくクラブ全体が同じ想いを共有している。

「やはりまだまだ復興にはいろいろ(必要)なことがあると思いますし、私が福島で実際に見てみてもまだまだ整備しなければいけないし、まだまだ苦労している人がたくさんいるなというのを感じます。けど、我々にできるのは本当にサッカーを通じて、そういう被災地の人であったりとか、心に痛みを持っている人たちに勇気を与える、喜びを与える、少しでも笑顔にしてあげることなので、今シーズンは本当にひたむきに戦おうと。上手い下手関係なしにそういう人たちに勇気を与えることを、サッカー界でもやっていければ、そういう人たち(被災者の方々)のためにもなると思います」(田坂和昭監督)

「もちろん(福島は)生まれ育った街で、特別な思いはあります。震災があった街ですし、スポーツの力で福島という土地を盛り上げていければいいかなと思っています。自分ができることはそういうことかなと思っています」(茂木弘人)

 毎年、この時期になるとテレビなどで震災関連のニュースが増えて「3.11」について考えさせられる。スポーツの力は目に見えないが、人々を笑顔にすること、子供たちに夢を与えること、日々の生活のエネルギーになること、そういったポジティブな影響は確実に存在する。それを福島ユナイテッドFCは日々の活動で証明し、これからもずっと続けていく。

 取材を終えて自宅の最寄駅で電車を降りると、どこからかNHKが制作した復興テーマソング『花は咲く』が聴こえてきた。この曲を耳にすると、いつも一生忘れないであろう6年前のあの日を思い出す。福島のみならず、東北地方の復興はまだ道半ばだ。

 本当の意味で“復興”と言える日は、まだまだ先のことかもしれない。それでもいつか花を咲かせ、実りの日を見るまで、福島ユナイテッドFCは笑顔の種を蒔き続ける。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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