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日本代表 7年前

【識者の眼】香川&清武の同時起用か、あるいは倉田か。ハリルJのジレンマを解消する中盤のチョイス

text by 河治良幸 photo by Getty Images , Shinya Tanaka

香川・清武とは異なるタイプの倉田

倉田秋
ハリルホジッチ監督が「戦術的な変更の中で興味深い選手」と称する倉田秋【写真:田中伸弥】

 清武の場合はミドルレンジのスルーパスや遠目からのシュートという“飛び道具”もある。当然セットプレーのキッカーとしても有効だ。ただ、ネックとしては2人とも攻撃的なキャラクターとしては献身的な守備を身上とするものの、単騎のボール奪取やカウンターを阻止する“ファイタータイプ”ではないこと。

 基本的にボールを支配する試合展開とはいえ、守備的MFの負担が大きくなる。そうしたリスクを限定しながら攻撃にプラスアルファをもたらせる存在としては倉田秋がより有力だ。

 UAE戦にも途中出場した倉田は指揮官が「ボールリカバリーをしながら、後ろからプレーを加速させる」と評価するように、テクニシャンでありながら高い機動力を兼ね備えることで速攻と遅攻を織り交ぜる“チェンジオブペース“はクラブの大先輩である遠藤保仁ゆずりだ。

「どこでもやれる自信はある」と語る倉田。現在のG大阪ではダイヤモンド型の中盤のトップ下を担うが、守備時はほとんどボランチに近い役割をこなしており、攻守に渡る激しいアップダウンも苦にしない。もちろん従来の[4-2-3-1]を採用した場合はボランチも可能だ。

「戦術的な変更の中で興味深い選手。ボールを持っている時、持っていない時にスプリントできる」という特性は攻撃面においても香川や清武とまた違うもので、インサイドハーフで彼らと併用した場合も役割が被りすぎず、守備のバランスを意識しながら、攻撃で明確なアクセントを出せる。

 途中出場だったUAE戦ではやや周囲とズレが生じるシーンもあったが、短い時間でも独特の緊張感を経験したことで、より持ち味を発揮しやすい準備は整うだろう。

 香川、清武、そして倉田。タイの守備を崩して得点を奪うために、どの形で、誰をどうチョイスしていくかはハリルホジッチ監督の判断次第だが、UAE戦に増してこのポジションの選手がキーマンになるはずで、彼らの出来がゴールの鍵を握る。それは彼らの存在価値を問うことも意味する。

(取材・文:河治良幸)

【了】

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