川崎F・奈良竜樹が放つ異彩。2度の負傷と五輪代表落選経て培った強靭なメンタリティー

2017年04月11日(Tue)12時05分配信

text by 藤江直人 photo Getty Images
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「僕のミスから失点してしまったので、取り返すのは当たり前」

 時計の針が後半48分に差しかかろうとしていたとき、奈良の縦パスを受けたMFハイネルが強烈な一撃を放つ。相手GK岡大生の必死のセーブでゴールラインを割った直後に、奈良は自らに言い聞かせていた。

「僕のミスから失点してしまったので、取り返すのは当たり前のことだ、と思っていた」

 中村が蹴った右コーナーキック。高い軌道を描いた放物線は敵味方が密集していたニアサイドを大きく越えて、大きなスペースが広がっていたファーサイドに落下してくる。

「もう時間もなかったので、憲剛さんもどこかを狙うというよりは、ニアサイドにいたストーンの相手選手に引っかからないように蹴ったんだと思う。僕としても速いボールよりは、ああいうフワッとしたボールのほうが合わせやすいので。僕としても『いいボールが来た』と思って」

 ファーサイドにフリーで侵入してきた奈良がジャンプ一番、頭をボールにヒットさせる。緩やかな軌道を描いた放物線は、必死に伸ばされた岡の右手をかすめてゴールの右側に吸い込まれていった。

 冒頭で記したように雄叫びをあげた奈良はポジションに戻りながらゴール裏へ向けて振り返り、逆転への雰囲気をもっと煽ってほしいとばかりに、両手を下から上へ動かすゼスチャーを取った。

「僕自身は攻撃でのヘディング練習はあまりしないんですけど、あの場面では来たボールをとにかく逆方向に打とうと思ったら、たまたまいいコースに飛んだだけなので。ただ僕はスコアラー、というか点を取る選手ではなく、ディフェンスの選手として失点しないことにこだわっているので。

 このスタジアムの雰囲気は僕たち選手を動かす力があると思うので、残り時間は少なかったですけど、逆転するために一体となったムードを作り出したかった。実際、あの大声援に後押しされてチャンスがいくつか生まれたけど、点を取られてから目を覚ますようでは、やっぱり勝ち点を落としてしまいますよね」

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