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楠神順平と田代有三、シドニーの地で活躍する2人の元J戦士。それぞれの立場で挑む異国での戦い

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu, Nino Lo Guidice

「来年はこの悔しさを全部ぶつけたい」

楠神順平
楠神順平は勝敗を分ける重要なPKを外し、地面に崩れ落ちた【写真:Nino Lo Guidice】

 そのわずか5日後の4月26日、楠神の姿は浦和レッズの本拠地・埼玉スタジアムにあった。ショックが抜けきれないまま臨んだアジアチャンピオンズリーグ(ACL)での日本凱旋試合は、1‐6と浦和に力の差を見せつけられ屈した。

 しかし、その試合で元アジア王者WSWの意地を見せる技ありのゴールで一矢を報いるなど、楠神は敗者の中で一際目立っていた。ピッチ上を諦めずに駆け回る姿は、何とかして少しでもファイナルシリーズ敗退の責任を償おうとしているかのようにも見えた。

 そして、その日本遠征から帰国した翌々日、シドニーのカフェで相対した。指定の場所に向かう途中、ふと気づいた。インタビューを行うカフェのあるエリアには、シドニー・フットボールスタジアム(アリアンツ・スタジアム)がある。もしあの日、ブリスベン・ロアに勝っていれば、相まみえるはずだった地元のライバルであるシドニーFCのお膝元。しかもその日は、Aリーグ・ファイナルシリーズのセミファイナル当日だった。

 セミファイナル進出の夢が絶たれたブリスベン戦の後には「ダービーどうのよりも、このチームで歴史を創ろうと話していたので、それが出来なくなって申し訳ない気持ちでいっぱい」と話していた楠神。

 Aリーグ史上最高の勝ち点を挙げ、圧倒的な強さを誇ったシドニーFCに今季の公式戦で唯一土を付けたのは、WSW(2月18日の第20節)で、ダービーで仇敵を倒してのファイナル制覇という新たな「歴史」を刻む、力になりたいーーそんな思いは叶わないままに終わった。

「きつかった。でもやっぱり、それも自分の実力。でも、(ファイナルシリーズでの)敗戦後にみんながとてもいい言葉をかけてくれて、自分の中で切り替えることができて、次の試合(ACL浦和戦)で点が取れた。来年はこの悔しさを全部ぶつけたい」と語る顔に、まだ一抹の悔しさが残る。

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