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楠神順平と田代有三、シドニーの地で活躍する2人の元J戦士。それぞれの立場で挑む異国での戦い

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu, Nino Lo Guidice

監督やファンから高評価を獲得した田代。ニックネームは「シショウ」

 そんな田代にチームの評価もすこぶる高い。試合後、典型的なストライカーのトップ下起用の意図などをウルヴズのジェイコブ・ティンパノ監督に聞いた。

「ここまでのユウゾウの働きは期待以上のものだ。最近は中盤でも彼の経験でチームの力となり、それでいてゴールも決め続けている。素晴らしい人間性と高いプロ意識を見せる得難い選手だ。トップ下でも非常に自信をもって、その経験でチームにいい影響をもたらてくれている。今のように少し下がり目で彼にプレーしてもらうのがよりチームにフィットすると思う」と語った。

 ここまで、22試合しかないリーグで8試合5得点とコンスタントにネットを揺らし続ける田代。このハイペースを維持できれば、残り13試合で公言している「15得点」というノルマの達成も夢ではない。そして、チームが目標とするプレーオフ進出圏内入りも十分に可能だ。

 しかし、自身の好調にも浮かれることはない。「(好調とは言っても)強い相手、上位陣相手にもゴールを決めていかなきゃいけないし、チームが良くないときに(チームを救うような)1点を決められるようやっていきたい」とゴールの“質”にもこだわっていく。

 最後に日中に楠神から預かった「ワンダラーズ(WSW)で待ってる」とのメッセージを伝えると、「ワンダラーズ? 入れてたら、入ってましたけどね(笑)」と笑ってリアクションするも「でも、このチーム(ウルヴズ)で僕はとても居心地がいいし、すごく大事にしてもらって、チームの中心として考えてくれているので、とてもやりがいがある」とキッパリ。

 早ければ2018/19シーズンから実現するAリーグのチーム数拡大に、単独または近郊地域とのジョイントでの参戦を目指すチームのために尽くしていくことを第一義とする姿勢に変わりはない。

「体やコンディションは万全なので、とにかくケガなくやりたい」と笑顔の田代。親しいチームメイトには「シショウ(師匠)」のニックネームで呼ばれ、ファンにも「ユウゾウ」と頻繁に声を掛けられるなど、すっかりチームにも馴染み、シドニーの南の外れからAリーグ入りを目指す古豪で自分の居場所を作っていた。

 セレッソ大阪で2015年に共にプレーした楠神と田代。お互いが「まさか豪州で再会するとは思っていなかった」と口を揃える。田代の本拠地ウーロンゴンが少し遠いこともあって、ここまできちんと会って話せていないという2人は、この取材の翌日に家族ぐるみでシドニー中心部の遊園地に出かける予定とのことだった。そこで、2人がどんなことを語り合って旧交を温めたのかは、次回の取材で聞くことにしたい。

 豪州でチャレンジする日本人選手のトップを走る両名の活躍を今後もしっかりと追っていきたいと思う。

(取材・文:植松久隆【シドニー】)

【了】

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