フットボールチャンネル

楠神順平と田代有三、シドニーの地で活躍する2人の元J戦士。それぞれの立場で挑む異国での戦い

text by 植松久隆 photo by Taka Uematsu, Nino Lo Guidice

3月に豪州へ渡った田代有三。新天地で任されたポジションは…

田代有三
今年から豪州でプレーしている元日本代表FWの田代有三【写真:Taka Uematsu】

 楠神と会った同日の夜、その熱い思いを携えて電車を乗り継ぎ、シドニーの南郊ミランダまで、2月に来豪した元日本代表FW田代有三(34/ウーロンゴン・ウルヴズ)の出場試合の取材に足を延ばした。

 NSW州1部(豪州2部相当)ナショナル・プレミアリーグ(NPL)NSWのサザーランド・シャークス対ウーロンゴン・ウルヴズの試合には、ウルヴズの田代に加えて、サザーランドにも村山拓也、梶山知裕と日本人選手が所属しており、さながら「日本人ダービー」となっていた。とはいえ7人の日本人が活躍するリーグではさほど珍しいことではないのだが。

 この試合の前、すでに7試合で3得点を決めている田代。この日のポジションは、2トップの下のいわゆる“トップ下”。聞けば、ここ数試合はこのポジションでの起用が続くという。長いキャリアをチームの最前線で体を張り続けてきた生粋のセンターFWが慣れないポジションで起用されるのは何とも不思議な光景だったが、試合を通じて古豪ウルヴズの攻撃の中心にいたのは田代だった。

「2,3試合試合ボールが回らず、うまく行かない試合が続いた。他にパスを出せる選手がいなくて、監督にボールをもう少し触ってくれと言われてひとつポジションを下げてから4試合目。それで3勝しているから、こっちの方がしっくりきてるという感じ」と語る田代。

「このポジションだとボールを蹴れるから自分でリズムを掴みやすいですけど、やっぱり僕は前の選手なんで、あまり下がり過ぎてもゴールに届かなくなる」とストライカーとしての矜持も覗かせる。

 慣れないポジションでも結果を出さなければいけない“助っ人”の立場と義務に変わりはない。この試合での田代は、今季ここまで1勝となかなか波に乗れないサザーランド相手に、チームが求める以上の働きを見せ後半途中でベンチに退いた。交代直前には、フリーキックからのゴール前の交錯でボールがゴールに吸い込まれた。

 スタンドの観衆やメディアボックスにいた筆者など誰もが「うわ、ハットトリック!?」と騒いだが、試合後には「僕は触れてないので、キッカーのゴールかオウンゴール。自分のゴールになればラッキー(笑)」と涼しい顔。それでも「こういうゴールがもっと必要」と自画自賛する流れからのファインゴールとPKで2得点、幻のハットトリックの大活躍と充分の働きを見せた。

1 2 3 4 5

KANZENからのお知らせ

scroll top