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Jリーグ 7年前

久保建英から見えたバルサのDNA。小野伸二やウタカが絶賛する“左利きのイニエスタ”の才能

text by 舩木渉 photo by Getty Images

久保建英が見せた守備スキルの高さ。攻守の連続性が際立つ

 久保が「日本のビッグスター」になると語るウタカは、15歳の少年の質の高さと献身性を指摘した。確かに札幌戦でも守備スキルの高さは随所に見せていた。

「自分は途中交代で入っていて、相手も味方もみんな疲れている選手ばかりの中で、自分が走れなかったら交代で出た意味がないと思っていたので、そこはホントに意識していました」

 そう語る久保の前線からの守備は、お手本のようなプレーばかりだった。ボールを失えば即座に相手との距離を詰め、内側から外側へ追い込むコースの切り方も的確。さらに守備でも緩急をつけて絶妙にプレッシャーをかける。

 最初は徐々に相手のプレーの選択肢を奪い、ある程度近づいたところで一気に間合いを詰めてボールを刈り取りにいくヨーロッパ的な守備の作法を実践し、結果的に自分のところで奪えずとも、他の選手のところで確実に取り返せるシチュエーションを作っていた。

 久保自身がボールをカットすることもあれば、味方が久保の守備の恩恵を受けてボールを奪うこともある。15歳の守備からいい流れが生まれていたのは一度だけではなかった。一般的に抜かれるのを嫌がって距離を保ったまま引くばかりの、日本の“アリバイ守備”とは一線を画すプレーの連続だった。

 15歳で元バルサということもあり、久保の一挙手一投足は殊更に注目を集める。札幌戦にもメディアが殺到し、FC東京の広報担当者が久保のためだけに特別な取材対応の時間を設けたほどだった。だが、彼のプレーには注目されるだけの理由がある。

 攻守に連続性があり、よどみなく常に細かく動きながら、そのうでプレーに無駄がない。U-20日本代表の内山篤監督が「彼はサッカーで一番難しい、自分に何ができるかというのを一番よくわかっている選手」と評したのも、プレーの取捨選択に無駄がないからこそだろう。

 ピッチ上のあらゆる局面に絡むことができ、個人スキルの精度が高く、プレー判断が高速かつ的確、そして軽業師のようななめらかな動きには、やはりイニエスタの姿が重なる。

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