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バルサ、国王杯3連覇の立役者。先進的なフィジカル理論でチーム支えた青年コーチ

text by 坪井健太郎 photo by Getty Images

試合のようにトレーニングをする。そうでなければサッカーではない

ラファエル・ポル
フィジカルコーチとしてバルセロナを支えたラファエル・ポル【写真:Getty Images】

 バルセロナのフィジカルトレーナーに就任してからは、メッシのコンディションをトップギアの状態へと戻したことはスペインでも有名な話である。バルセロナのチームのパフォーマンスは良い意味でも悪い意味でもメッシに依存している部分が大きく、メッシのパフォーマンス次第でチームの成績は上下すると言っても過言ではない。

 そのような選手のコンディションを見事にトップレベルに再調整したという意味では、ポルの存在は大きいと言える。

 事実、元バルセロナ監督で現マンチェスター・シティ監督のジョゼップ・グアルディオラも「バルサ成功の鍵はポルにある」と述べている。

 ラファエル・ポルのトレーニングメソッドの哲学には「トレーニングは試合のように行うべきだ。そうでなければ、それは“ただのトレーニング”となってしまう」というものがある。5月30日に発売されるラファエル・ポルの著書『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』(筆者が翻訳を担当)にもその要素が満載だ。

 フィジカルトレーニングの理論といっても、コンディショニングの話のみに終わることなく、「集団スポーツとしてのサッカーのプレーモデル」や「複雑性」にも言及している。

 また、『サッカーにおいてフィジカルコンディショニングは存在しない。存在するのはチームアクションを条件付けるファクターの相互作用である(パコ・セイルーロ)』、『私にとってフィジカルコンディションが良い選手というのは存在しない。プレーモデルに沿ったプレーができる状態かどうか、だ。私にとって持久力とはプレーのアイデアに順応し、個人アクションとチームアクションを実行できる状態にあるかどうか、である(ジョゼ・モウリーニョ)』(共に『バルセロナフィジカルトレーニングメソッド』から引用)という考え方に賛同し、過去のサッカー界のフィジカル概念(フィジカルとサッカーを個別に取り扱う考え方)に対して真っ向から疑問を投げかける姿勢をポルは著書で示している。

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