求められる受け身からの脱皮。香川が担うべきリーダーとしての役割
周りを取りまとめ、コントロールしたその経験は日本代表でも必ず生きてくる。インサイドハーフのパートナー・今野は34歳のベテランだが、ハリルホジッチ監督がスタメン候補と位置づける他の攻撃陣はいずれも香川より年下。アンカーの山口も同様だ。国際Aマッチの試合数もハイレベルな国際舞台に立った回数も際立って多いのだから、自分からどんどん周りを動かす役割を担うべきではないか。
ダイナミックなランニングを得意とする原口に対して「ボールを取った後のスプリントだけじゃなくて、それ以外の引き出しも増やしていかなきゃいけない」と要求するあたりは、その自覚に表れだろう。長年、本田圭佑(ミラン)や岡崎慎司(レスター)ら年長者に引っ張られ、彼らの考えに合わせがちだった香川だが、そろそろ受け身な姿から脱皮してもいい時期。シリア戦でそれができれば、自信と余裕を持ってイラク戦に乗り込めるはずだ。
そのシリアという相手も、2016年3月の2018年ロシアW杯アジア2次予選最終戦(埼玉)で彼自身が2ゴールを奪ったゲンのいい相手である。
「そのことは考えてなかったけど…」と香川は笑ったが、ゴールへの渇望は人一倍強いはず。今季ブンデスリーガで1ゴールに終わった悔しさを晴らし、納得のいく形で今季を終えるためにも、ここでスッキリとした得点がほしい。1年3か月前の再現が期待されるところだ。
「今回はメンバーも代わるだろうし、初めての選手もいるし、そういう選手のサポートしながら、自分がチームにいいものをもたらすことにこだわりを持ってやっていきたい」と本人も言うように、香川が攻守両面のスイッチ役、統率役として新たな一面を見せてくれれば理想的。エースナンバー10の躍動が楽しみだ。
(取材・文:元川悦子)
【了】