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日本代表 7年前

原口元気がイラク戦で味わった屈辱。ベンチで噛み締めた無力感…捲土重来への覚悟

text by 元川悦子 photo by Getty Images

原口が味わった屈辱。追いつかれる様をベンチで見守る悔しさ

 この屈辱的ドローをベンチで見守ることになった原口は、悔恨の念を拭えなかった。

「ああいう時間帯こそ、自分みたいな選手が……自分を過大評価してるわけじゃないけど、頑張り切れるようなプレーができたと思ってるし、外に出てしまったら何も助けられない。助けられないのがもどかしかったですけどね。別に批判してるわけじゃないし、(倉田)秋くんも素晴らしい選手だし、監督の判断も尊重してるけど、助けたかったのはありました」と背番号8は納得いかない思いを抱えつつ、必死に言葉に絞り出していた。

 実際、試合のターニングポイントは2つあった。ひとつは前述の通り、井手口の負傷。20歳のダイナモも武器であるボール奪取力を出せるようになってきた時間帯だっただけに交代は痛かった。穴埋め役はベテラン・今野泰幸(G大阪)。ボランチのパートナー・遠藤は「今野さんは(自分と)同じボールを奪うタイプなんで違和感はなかった」と言うように、何とか落ち着きそうな気配も感じられた。

 だが、ハリルホジッチ監督が次に切ったカードが明暗を大きく分ける。最終予選最多得点を誇る原口を「疲れている」と下げたことで、交代カードを1枚使ってしまったのだ。このタイミングが早すぎたため、久保と酒井宏樹が痛んでもどちらか1人しか代えられなくなった。

 久保は立っているのが精一杯。本来の推進力は影を潜めた。指揮官の采配ミスと言わざるを得ない判断だった。こうして次々と後手後手を踏むチームを目の当たりにしつつ、原口は「自分はまだいけたのに…」という割り切れない思いが募ったようだ。

「代えられた理由? 点を取ってないからじゃないですか」

 吐き捨てるように言った彼からは、自身に対する指揮官の信頼の薄さに対する苛立ちが垣間見えた。昨年9月のタイ戦(バンコク)から4試合連続得点を奪い、前半戦のけん引役になったことで「自分がチームを引っ張っていくんだ」という気概は誰よりも強かった。だが、3月のUAE戦(アルアイン)・タイ戦(埼玉)の2連戦で久保が台頭し、今回のイラク戦で大迫が先制点を挙げると、原口の序列が低下した印象も強かった。

 やはりFWは得点できなければ存在感が薄くなる。ヘルタ・ベルリンのようにハードワークや献身的守備を買われて使われている環境とは違い、代表では点取り屋として期待されている。この日はトップ下に入ったものの、求められていたのは、ゲームメークではなく得点だった。

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