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Jリーグ 7年前

G大阪・井手口陽介、堂安律との絆。宇佐美に続くガンバ生え抜き組がつなぐバトン

text by 藤江直人 photo by Getty Images

A代表デビューも果たし、W杯最終予選で先発出場

 相手守備陣の意表を突く高速クロス。たとえ長沢がタイミングを合わせられなかったとしても、ファーサイドに走り込んできていたMF藤本淳吾の姿を井手口はしっかりととらえていた。

「負けていたので、あそこまで上がってああいう仕事ができたことはよかったですけど。でも、勝ち切れた試合やったんじゃないかと思うので」

 この時点でのポジションはボランチ。後半19分のシステム変更まで務めたインサイドハーフを含めて、攻守両面で驚異的な運動量を披露した井手口は、まさに神出鬼没の動きを繰り返した。

 フロンターレの攻撃の芽をことごとく摘み取る、まるで猟犬をほうふつとさせる獰猛な守備。ボールを奪うや、カウンターの一翼を担って重馬場のピッチで何度もスプリントを駆ける。

 総走行距離12.161キロは、両チームを通じて文句なしのナンバーワン。実に41回を数えたスプリント回数は、J1全体でも群を抜く1位だった。それでも試合後には、平然とした表情を浮かべている。

 昨シーズンまでのチームメイトで、敵味方として初めて同じピッチで対峙したフロンターレのMF阿部浩之も、底知れぬ才能を秘める後輩に対して苦笑いするしかなかった。

「本当にどこにでも顔を出してくるし、オフェンスの能力もどんどん上がっている。すごくいい選手だと思っているし、これで点を決められるようになれば、もっとすごい選手になる」

 6月は濃厚な経験を積んだ。7日のシリア代表との国際親善試合で、念願のA代表デビュー。舞台を中立地テヘランに移した、13日のイラク代表とのワールドカップ・アジア最終予選では先発に指名された。

 前者はアンカーで、後者は遠藤航(浦和レッズ)とのダブルボランチでともに及第点のパフォーマンスを演じる。しかし、好事魔多し。イラク戦の後半途中に頭を強打し、退場を余儀なくされてしまう。

 スタジアムから向かったテヘラン市内の病院で脳震とうと診断され、チーム本体から一日遅れの15日に帰国。日本サッカー協会の規定により、17日のヴィッセル神戸戦を欠場せざるをえなかった。

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