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【倉敷&玉乃の眼】バルサ、サイクルの終焉。顕著だったMSN依存【16/17シーズン総括】

シリーズ:16/17欧州主要クラブシーズン査定 text by 編集部 photo by Getty Images, Natsuki Nakazawa

前線の「4人目」をどうするか。L・エンリケ退任はサイクルの終わり

ーールイス・エンリケ監督の退任によって、ペップ・グアルディオラ監督就任から始まったひとつのサイクルが終わったと言ってもいいのでしょうか。

倉敷 バルサのひとつのサイクルが終わって、確実に変わらなければどうしようもないというところにきているとは思いますね。

玉乃 ペップのサイクルは3年で終わったんじゃなくて、6年で終わったという考え方もできるかもしれませんよね。貯金を使い切ったという意味で。

ーーこれだけマイナスな面が多かったシーズンと言われていますが、優勝したマドリーと比べてもリーグ戦の負け試合数はひとつしか変わりません。それでもバルサが危機的状況だった理由はどこにあるのでしょうか。

倉敷 昨季で言えば、負ける試合ではMSNの影響をもろに受けるんです。では、なぜメッシら3人の状態が悪くなるかというと、原因は代表戦にあります。W杯予選などで南米から帰ってきた直後でメッシがお休み、スアレスもちょっと調子が悪いからピッチにいるけど休みがち、ネイマールも疲れ切っている…そんなゲームでのバルサはどうしようもなくなるんですよね。他に誰が活躍してくれるかというと、結局ゴールを決めてくれる選手は誰もいないですよ。

玉乃 前線の3人が全く動かないと、バルサはこれほどまでに機能しなくなってしまうんだ…という印象を受けました。そこはレアルと違います。確かにガレス・ベイルやクリスティアーノ・ロナウドが何もしない試合はあったんですけど、それをカバーして上回る中盤の構成力で相手を凌駕していくんです。

ーーMSNの負担軽減のためにパコ・アルカセルを獲得しましたが…。

倉敷 残念ながら仲良しに見えるバルサの中にも、確実にヒエラルキーがあります。そこでまず認められない限りパスは回ってこないし、シュートも打てない。メッシがスアレスを認めたのは、右足に関してはスアレスの方がうまいからです。でなければあれほど仲良しにはなれませんよ。

ーー周囲に自分を認めさせるには、他の選手よりも特に秀でている部分が何かなければいけない。

倉敷 そういうことです。パコもシーズン終盤はシュートを打てるようになってきて、少し認められたのかなと思いますが、ヒエラルキーが強烈な故、南米の高地でゲームをしてから長距離を移動して帰ってきた状態でもMSNの3人は必ずスタメンになります。悪かった時のバルサはどうしようもない、というゲームをいくつか作ってしまったような印象ですね。

 それでもパコまずまず頑張ったんじゃないですか。ただ、バルサの「4番手」としては物足りない。彼、実は高さがないですからね。多くの人はパッと見の印象で「パコって背が高いんだ」という印象を抱きがちですけど、実はイニエスタ並みに小さい。バルサにとってはあのポジションの選手が欲しいのではないということがわかって、前線の新たな「4人目」は新シーズンに向けての大きな補強ポイントになってくるでしょうね。

 どちらかというとエストレーモ(編注:スペインサッカーにおけるウィングプレーヤーの呼称)に近い選手でなければ、MSNと組ませた時にバリエーションを持たせるのは難しい。パコは右のエストレーモとして使われることが多かったですけど、クロスを上げるだけで中に入ってきませんでした。周りといい関係を築いて自分の特徴を出していくのは難しかったんだろうと思います。

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