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乾貴士、「上手い選手」から「サッカーを知る選手」へ。スペインで身につけた「守備の連動性」

text by 小澤一郎 photo by Getty Images

足元の技術が上手いテクニシャンからの変貌

 今回の取材では昨季の最終節バルセロナ戦の映像を用いて乾の頭の中を覗き見る、つまりはSDエイバルで実践する戦術を言語化してもらうことを試みた。

 主に守備の局面を10シーンほど抜き出した上で、各局面における乾自身のポジショニングやプレーアクションの意図を一つ一つ聞いていったことで確認できたことは「ラ・リーガでプレーしたことによる戦術面の向上」だ。

 乾にぶつけた質問と内容が被るのだが、筆者はJリーグや日本のサッカーのインテンシティーが高くならない大きな理由はこの戦術面にあると見ている。

 乾自身も「チームとして守備をやってなかったら絶対にできないです」と口にしていた通り、SDエイバルのようにどの相手に対しても前線の高い位置からハイプレスをかけ、縦にも横にもコンパクトな状態を作り、相手のプレーエリアを圧縮・限定しながら論理的にボールを奪う守備戦術こそがある意味ではラ・リーガの代名詞であり、高いインテンシティーや速いプレースピードを生み出す土壌なのだ。

 乾が今、ラ・リーガで純粋にプレーを楽しめているのは「日々、新たにサッカーを知ることができている」からだと推測している。ここからわかるのは、ラ・リーガで乾が成功できた要因は、足元の技術が上手いテクニシャンからサッカーを知っている選手へ素早く変貌できたこと。

 だからこそ、インタビューの最後に「パスサッカー好き」という共通項があるように映る日本とスペインのサッカーの違いについて明確かつ論理的に見事な解説をしてくれた。

「スペイン人監督にどんどん日本に来てもらうか、選手がどんどんスペインに来てやってもらいたいですけどね。そうすると日本のサッカーもどんどん変わるんじゃないかと思います」とインタビューを締めくくった乾が今理解するサッカーや戦術レベルは必ず日本サッカー界全体で共有知としなければいけない。

(取材・文:小澤一郎)

【了】

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■乾貴士 リーガで磨かれ続ける戦術眼とインテンシティー
■風間八宏 受ける・外す
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