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Jリーグ 7年前

磐田・中村俊輔、主役であり黒子に。稀代の名手がジュビロの仲間と進める歩み

text by 青木務 photo by Getty Images

勝ち点をもたらすこと以外の貢献

 サポーターの声援を背に、磐田は試合開始からチャンスを作り出した。しかし、気迫溢れる守備を見せる相手からゴールを奪うことができない。

「前半の最初にいい形が何回かあって、ああいうところで点が入っているゲームは、2~3点差つくような展開になると思うけど……」

 今シーズンの磐田は試合の入りが非常にいい。勝利から見放された5月も、先にチャンスを迎えるのは磐田だった。しかし、当時は決定機を活かせぬまま相手にペースを奪われていた。今回のC大阪戦も同じ展開で、37分に先制点を奪われる。

 元韓国代表のユン・ジョンファン監督率いるアウェイチームは、後半途中からDFを投入し守備を固めた。直近3試合で2度の逆転負けを喫している彼らは、より高い集中力で試合を終わらせようとした。

 時折、C大阪は鋭いカウンターを見せたが、全体の重心は高くない。そのため磐田が押し込み、クロスやバイタルエリアでの崩しからフィニッシュを目指すも、相手の壁を打ち破ることはできない。さらに途中出場の荒木大吾が足を痛めてプレー続行が不可能となり、交代カードを全て使い切っていたチームは10人で戦うことになった。

 それでも最後まで諦めない姿勢が実り、ドローに持ち込んだ。ポストに助けられたシーンもあったとはいえ、守備陣はこの日も身体を張った。最前線の川又はシュートを外しても気落ちせず、次のチャンスが来ると信じて牙を研いだ。「全員でもぎ取った勝ち点1だと思う」と、中村俊輔は答えている。

 執念で1ポイントを掴んだサックスブルーはまた一歩、前へ進んだと言えるだろう。

 磐田に勝ち点をもたらす中村俊輔だが、彼の貢献はそれだけではない。チームをいかに進化させるか、という点にも力を注いでいるように思う。勝利に飢えているのは間違いない。ヤマハスタジアムでのある試合の直後、こう口にしたことがある。

「ホームでやる以上、負けは僕の中ではあり得ない」

 数々の栄光を掴んできた男にとって、『敗北』は我慢ならない屈辱だろう。一方で「勝っても負けてもプラス」というフレーズも耳にする。目先の結果に一喜一憂することなく、日々成長するチームでのプレーにやりがいを感じているのだろう。

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