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コウチーニョ騒動が象徴する現代移籍市場のいびつな構造。過剰なインフレ、狂ったパワーバランス

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

リバプールは“最終オファー”を無視。コウチーニョ退団の可能性は…?

コウチーニョ
最近までリバプールで満足している様子だったコウチーニョ。この夏の決断は後々のキャリアにも大きく影響しかねない【写真:Getty Images】

 例えばマンチェスター・シティがウェストブロムウィッチからDFジョニー・エバンスを獲得するためには、最低2500~3000万ポンド(約35億円〜42億円)が必要とされている。確かにCBはタレント枯渇が著しい。とはいえ、中堅クラブに所属し、わずか3ヶ月後には30歳となる“一介の”DFを獲得するのにこれほどの金額を必要とすることは、昨年まではなかった。フットボールバブルが弾けるのはそう遠くないと考えてしまうのは、筆者だけではないはずだ。

 選手の持つ力に目を向ければ、現在のプレミアリーグではサウサンプトンのフィルジル・ファン・ダイクが移籍を志願してクラブ側から干されている状況だが、セインツが代役の獲得に成功すれば、本人の希望が叶って放出されるのが既定路線だ。

 一方、レスターのリヤド・マフレズは同様に移籍を申し入れたものの、クラブ上層部、そして監督と対話したうえで、今もレギュラーとしてプレーしている。クラブ側が満足するオファーがあれば移籍を容認するが、見返りとして「プロフェッショナルの意識を持ち、プレーしてくれと話した」とクレイグ・シェイクスピア監督も先日の試合後に説明していた。今のサッカー界は選手と代理人の力が絶大なのである。

 話をコウチーニョに戻そう。先週、懇意にしている地元紙『リバプール・エコー』のリバプール番、ジェームズ・ピアース記者に連絡したところ、「今夏のコウチーニョの移籍はおそらくないだろう」と予想していなかった回答をもらった。ただその時は理由を教えてもらえなかった。

 だが21日の月曜日、同紙に掲載された彼の記事を読んで、その内容が分かった。ピアース記者はクラブ内部にも精通するローカル紙のリバプール番なだけに、信ぴょう性が高いと個人的には考えている。そしてその記事の内容はこうだ。

 バルセロナは先日、“最後のオファー”という名目で1億1800万ポンド(約165億円)の特大のオファーを出した。しかしその内訳は、8200万ポンド(約115億円)を4回の分割で支払うが、残りの3600万ポンド(約50億円)はもしコウチーニョがバロンドールを獲得したり、CLで優勝したときのみに支払われるといった内容だった。

 つまり、基本金は8200万ポンドのみ。さらに、バルセロナがリバプールに与えた猶予はわずか48時間だった。またバルセロナには、ルイス・スアレス獲得時の返済がまだ残っているといい、これらすべてを検討した結果、フェンウェイグループはバルサが設定した20日の午後6時という返答期限を完全に無視することにしたのである。

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