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コウチーニョ騒動が象徴する現代移籍市場のいびつな構造。過剰なインフレ、狂ったパワーバランス

text by Kozo Matsuzawa / 松澤浩三 photo by Getty Images

リバプールが示したいメッセージ。移籍志願者の立場は…

リバプール
F・トーレス、スターリング、スアレス(左から)といった選手たちを放出したリバプールは「売る側」のままなのか【写真:Getty Images】

 フェルナンド・トーレスに始まり、ルイス・スアレスやラヒーム・スターリングなど、最近は「売る側」のクラブとしての印象が強くなっていたリバプール。まだ移籍市場がクローズするまで1週間強が残っているだけに、完全にエース流出の危機から脱却したわけではない。だが8月下旬のこのタイミングで移籍を容認し、新たな選手を獲得するのは非常に困難だ。

 リバプールはコウチーニョの移籍を頑として許さないだろうというのが一般的な反応で、さらにバルセロナのロベルト・フェルナンデスSD(スポーツディレクター)も「コウチーニョの契約には違約金の条項がないため、状況は厳しい」と『スカイスポーツ』でコメントしている。加えて、もし1週間持ちこたえることができれば、欧州の他のクラブに「自分たちはセリングクラブ(選手を売るクラブ)ではない」とメッセージを送ることができるはずだ。

 となると、残される課題は、コウチーニョをどのように再びチームに取り込むかである。ピアース記者によると、代理人のキア・ジョーラブチアンの助言などもあり、移籍志願をした際には「もう二度とリバプールのシャツを着てプレーしたくない」という内容もクラブ側に伝えられたという。

 選手本人としては自分の決意を示したい気持ちもあったのかもしれないが、記述のとおり、わずか7ヶ月前に話した内容とは大きく異なる。さらに言えば昨季終了時点でもリバプールに満足していたことを考えると、コウチーニョの本意ではないだろうとクロップ監督を含めた、クラブ上層部は考えるはずだ。

 さらに来年夏にはロシアW杯も控えている。選手にとってW杯の前年は非常に重要なだけに、駄々をこねて、試合に出場しないのは得策とは言えない。

 果たして移籍市場の閉幕時点でコウチーニョはリバプールの一員であるのか。それとも、自身が幼いころに憧れていたロナウジーニョ同様にスペインへ移籍して、現代フットボーラーの夢であるバルセロナ加入が叶うのか。残されたのはあと8日間だ。

(取材・文:Kozo Matsuzawa / 松澤浩三【イングランド】)

【了】

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