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筑波大学、天皇杯16強敗退も“ジャイキリ”連発で残した衝撃。青年たちが経た大冒険

text by 藤江直人 photo by Getty Images

ひとたび閉幕を迎えた天皇杯という大冒険

 ならば、アルディージャに喫した黒星は何につながるのか。おぼろげながらも、中野は次なるステージに駆け上がるための個人的な目標を思い描いていた。

「一つひとつのプレーの精度を上げていきたいけど、やっぱり決めるべきときに決めるというのは永遠の課題ではありますね。周囲にもっとゴールを決めさせるプレーヤーにもなりたいし、課題がたくさんある分だけ、逆に楽しみなのかなと思っています」

 川崎フロンターレU‐18出身で、トップチームへの昇格を辞退して進学した東京五輪世代のホープ、20歳のMF三苫薫(2年)は切れ味鋭いドリブルと華麗なパスでアルディージャの守備陣を翻弄した。

 JFA・Jリーグ特別指定選手としてフロンターレに登録されたばかりで、スタンドではフロンターレのスカウトも見守っていた。それでも久々の先発フル出場とあって、90分間を通して動き続けるためのゲーム体力が足りないと、試合後に今後の課題をあげている。

 選手それぞれが追い求める答えは、駒沢大学との後半戦第2節が24日に待つ関東大学サッカーリーグ1部、連覇のかかる全日本大学サッカー選手権(インカレ)で出る。卒業後は中学、高校と下部組織でプレーしたジュビロ磐田への加入が内定している中野が、全員の思いを代弁する。

「自分たちの力を出したつもりだし、見ている人たちに『筑波っていいな』と少しでも思わせるようなサッカーができたと思っている。大学サッカーがここまでできる、と見せられたのもよかったし、だからこそ次の試合が大事になる。ここで切り替えるか、下を向いたままになるか。

 僕としてはもう切り替えているつもりですけど、もしそうじゃない選手がいたら、自分たち4年生が引っ張っていかないといけない。負けたという結果を受け止めないといけないし、自分たちはサッカーで返していくしかないと思っているので」

 4月から火ぶたが切られた、天皇杯という大冒険の幕はひとたび降ろされた。それでも、進むべき道はまっすぐに前へと伸びている。プロと演じた真剣勝負を触媒として、多感な大学生たちがその後に遂げていく変化を楽しむのもまた、オープントーナメントでもある天皇杯の一興といっていい。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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