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日本代表 7年前

川島永嗣が示す守護神の矜持。楢崎正剛も太鼓判、苦境に次ぐ苦境を乗り越えた強靭な精神

text by 元川悦子 photo by Getty Images

真摯に自分のプレーと向き合うということ

 そうやって何か起きるたび、川島は底力を示して周りを納得させ、リベンジを果たしてきた。常人のレベルをはるかに超える精神力を持つ男を超えない限り、東口や中村が定位置をつかむことはできない。

「若い時に苦しい思いをしておくことで、それが後々、いい経験となって自分の糧になる部分はありますね。辛い気持ちは今までもあったし、これからもあると思う。それを1つひとつどうやって乗り越えていけるかだと思うんで」と川島は、楢崎や川口能活(相模原)という2人の先輩GKの壁に阻まれていたかつての自分を述懐していた。GKはそんな苦しい時期をどう過ごすかが極めて重要なのだ。

 2011年3月の東日本大震災の復興支援チャリティマッチで代表初招集を経験して以来、足掛け7年でわずか2試合して出場していない東口は「選ばれてる数の割には試合に出てへんと思うし、それでも今までもやってきたね。基本遠回りするタイプなんで、少ない中でも濃い試合にできればいいですね」と巡ってきたチャンスに全身全霊を注ぐ覚悟を口にした。

 今年からA代表に選ばれ始めたばかりの中村は「2人(川島と東口)は日本のトップで何年もやっている人ですし、学ぶべきところは非常に多いですけど、何とか超えていかなければいけないですね」と、自分の進むべき道を必死に模索している。

 20代の頃の川島も全く同じで、代表でもクラブでももがき苦しんできた。その試行錯誤の末にたどり着いたのが「1人の選手として真摯にプレーに向き合い、監督にアピールしていくこと」だった。

「そういう1人ひとりの気持ちが日本代表を強くしていくし、新しい歴史やページを作っていく糧になっていく」と本人が話したように、前向きな競争がなければGKのレベルアップも加速しない。

 長年「日本の弱点」と揶揄されてきたポジションの底上げをけん引するのは、やはりチーム最年長の川島である。彼の矜持を東口や中村、そしてチーム全体が共有し、9ヶ月後のW杯本番までフェアで高度な競争を見せてくれれば、日本代表は必ずいい方向に進むはずだ。楢崎も太鼓判を押している。

(取材・文:元川悦子)

【了】

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