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日本代表 6年前

長友佑都が胸に刻む「危機感」。ブラジル戦で日本代表100試合、絶望から這い上がった男の矜持

text by 元川悦子 photo by Getty Images

日本代表100試合目。ブラジルで味わった絶望

 インテルでは在籍8シーズン目と現在登録されているメンバーの中で最古参であり、移籍市場が開くたびに放出要員と言われながらその地位を守り続けてきた長友。本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)、香川真司(ドルトムント)の“ビッグ3”が不在となる今回の日本代表にとって、その卓越した国際経験値と粘り強さは大きな力になるはずだ。

 数々の修羅場をくぐりぬけてきた31歳の左サイドバックがウィリアンとの1対1で優位に立てれば、左サイドの攻めも推進力が出てくるはず。原口元気(ヘルタ・ベルリン)も「相手もふわっとする時があるから、サイドバックと2対1を作れたりするシーンができるかもしれない」と期待を込めて話していた。

 酒井宏樹(マルセイユ)と久保裕也(ヘント)のタテ関係が有力視される右サイドは、ネイマールとマルセロ(レアル・マドリー)と対面し、やや押されがちになることが想定されるだけに、日本が相手を本気にさせるゴールを奪うとしたら左サイドからになるだろう。長友にはそのけん引役になる使命があるのだ。

「ホントに行ける時は思い切っていかなきゃいけない。ただ、ウィリアンがどこまで守備をしてくるかわからないし、わざと残ってカウンターを狙ってくる場合もある。そこはホントに駆け引きが大事になってくる。バカみたいに空いてるからといって、相手の狙いにはまるんじゃ意味がないから、行くべきところ、止まるべきところをしっかり判断しないといけない」と長友は90分間通して冷静さを持続することの大切さを今一度、説いた。

 それこそが日本代表で99試合を積み重ねてきた選手の戦術眼だ。急激な世代交代が進むチームにあって、ハリルホジッチ監督が長友を使い続けるのは、こうした傑出した強みを持ち続けているからだろう。

 30代に突入しても成長への意欲が全く衰えないのは、過去の挫折や屈辱を忘れていないから。長友はこの日、「これまでの99試合で一番記憶に残っている試合はどれか」と報道陣に問われ、「2014年ブラジルW杯のコロンビア戦(クイアバ)」を挙げた。

 若き新星ハメス・ロドリゲス(バイエルン)らを擁するタレント集団に粉砕され、0-3で惨敗したこの一戦の後、長友は自信を喪失し、しばらくの間、報道陣から逃げ回るという彼らしくない行動を繰り返した。

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