諦めず食らいついた「トップ下」井手口。ブラジル相手に奮闘
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が2年半がかりで植えつけてきたデュエル重視の戦い方が世界トップ相手にどこまで通じるのか。それが11月10日にリールのスタッド・ピエール・モーロアで行われたブラジル戦の最大のテーマだった。
直前のトレーニングでは今回初招集の長澤和輝(浦和)をスタメン組に抜擢しそうな雰囲気を見せた指揮官だったが、フタを開けてみると、中盤は長谷部誠(フランクフルト)、山口蛍(C大阪)、井手口陽介(G大阪)の3人。2018年ロシアW杯行きを決めた8月31日のオーストラリア戦(埼玉)と同じ顔ぶれだ。ハリルホジッチ監督は現時点で最も信頼度の最も高いトリオを送り出した。
しかしながら、並びは微妙に違っていた。オーストラリア戦の時はアンカー・長谷部の前に山口、井手口がインサイドハーフとして陣取る格好だったが、今回は長谷部・山口のダブルボランチの前に井手口が位置する形。「今日の自分の役割は(ブラジルのアンカー・)カゼミーロ(レアル・マドリード)のファーストDF」と井手口本人も話したように、いわゆるトップ下ではなく守備第一で相手選手とのマッチアップを意図したものだった。
VAR(ビデオ判定)による吉田麻也(サウサンプトン)のPK献上、直後のネイマール(PK)の先制ごーるにゲームプランを崩された日本だったが、中盤の3人は持ち前の球際の強さを生かして果敢にプレスをかけにいった。ブラジルの選手たちの技術力が高いため、マークを剥がされたり、ボールを奪ってもすぐに奪い返されたりと思うような展開には至らなかったものの、井手口は諦めずにピッチを駆け回って相手に食らいついていく。
前半17分のマルセロ(レアル・マドリー)の豪快なミドルシュートによる2点目のシーンでは、自身のクリアが小さくなり失点のきっかけを作るミスを犯し「自分の甘さが出た」と反省したが、その後も出足の鋭さと豊富な運動量で必死に応戦する。
「チームとして(前から取りに)いかない時の方が多かったので、自分たちからハメにいけるようになればもっとボールが取れると思うし、もっと攻撃できたんじゃないか」と悔やむが、井手口は終始強気の姿勢を貫いていた。