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Jリーグ 6年前

川崎F・中村憲剛、15年分の号泣。「やっぱり優勝はいいよね」。ようやく取れた胸のつかえ

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「このやり方で優勝できたんだよね、言えることが大きい」

 タイトルがすぐ目前に近づいてきている、という手応えはあった。ひとつも取っていないことの方が不思議だと、周囲から見られているのもわかっていた。約4年半続いた風間八宏(現名古屋グランパス監督)体制から、鬼木達監督にバトンが託された今シーズン。それは確信に変わりつつあった。

「結果論というか、タイトルを取れたから言いますけど」

 こんな断りを入れたうえで、ボールを止める、蹴るといった基本を根本から磨き直し、独自のパスサッカーを植えつけてくれた前任者が築いた土台に、新たな色彩が加わったと力を込める。

「いままでのフロンターレでよくなかったとろを、オニさん(鬼木監督)が潰して、潰して、選手たちがついていってできたチームなので。攻守に隙のないチームを作ろう、というのが数字にも表れていると思うし、これでタイトルを取れなかったらもう難しいんじゃないか、というのもあったので」

 フロンターレの総得点71はリーグ最多で、総失点32はリーグで3番目に少なく、なおかつチーム歴代で最少となる。序盤のJ1戦線では勝ち切れない試合が続いたが、それでも喫した黒星はわずか4つで、7月29日に2‐5で大敗を喫したジュビロ戦が最後になっている。

 続く8月5日のFC東京戦を1‐1で引き分けると、最終節まで15試合連続で無敗(11勝4分け)を継続。最後の3試合はすべて完封で勝利し、一時は勝ち点で8ポイント差をつけられたアントラーズを最終節でついに逆転した。

 悲願の初タイトルを手にするまで、中村はある言葉を封印してきた。それは「これで先に進むことができる」というフレーズだ。いまでは「ようやく胸のつかえが取れました」と屈託なく笑う。

「タイトルを取らないことには先に進めない、ということは自分でもわかっていた。だからこそ、実際にタイトルを取ったときにどうなるのかが、自分でも楽しみだったというか。自分たちがやっていることに対して信頼はしているけど、でも勝っていないよね、と言われたら何も言い返せなかった。

 だからこそ、このやり方で優勝できたんだよね、タイトルを取れたんだよね、と言えることがフロンターレにとっては大きい。選手だけじゃなくて、スタッフにもサポーターにも半信半疑みたいなところは多分あったと思うし、そこを突き抜けなければ向き合えなかった部分だったので」

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