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日本代表 6年前

ハリルJに必要な人材。「持たされること」への懸念。パッキングポイントという評価軸【データアナリストの眼力】

シリーズ:データアナリストの眼力 text by 中山佑輔 photo by Getty Images

プランの実行が難しかった欧州遠征の2試合

アジア最終予選のオーストラリア戦(ホームとアウェイ)、ブラジル戦、ベルギー戦におけるパス成功数、パス受け数、パス受け割合のデータ。丸山は本来センターバックの選手であるが、アウェイのオーストラリア戦では左サイドの前線で起用されている
アジア最終予選のオーストラリア戦(ホームとアウェイ)、ブラジル戦、ベルギー戦におけるパス成功数、パス受け数、パス受け割合のデータ。丸山は本来センターバックの選手であるが、アウェイのオーストラリア戦では左サイドの前線で起用されている【データ:STATS社調べ、共同通信デジタル提供】

 そのような戦い方がW杯で上位進出を狙う強豪国相手にどれだけ通用するか。庄司氏は、それが11月シリーズのポイントになると指摘していたが、この2試合をどのように評価しているのだろうか。

「正直に言って、厳しい結果になってしまったと言わざるを得ないです。ベルギー戦ではかなり改善されたとはいえ、ブラジル戦では後方でのやり取りが多くなってしまいました。表1を見てください。ハリルホジッチ監督のゲームコンセプトがはまったアジア最終予選のオーストラリア戦と欧州遠征の2試合を比較します。

 前線の選手は交代選手が多いので個々の数値を見るとわかりづらいかもしれませんが、パス受けの数字を4バックと3トップでそれぞれ合計して、その割合を見てみると、ブラジル戦では4バックの選手たちの割合が明らかに増えています。ベルギー戦では後方で回す割合は改善されたとはいえ、結局FWの3人にボールが入っている割合は低いです。

 オーストラリアとの2戦では、4割ないし3割のパスを3トップに供給できていました。ですが、ブラジル、ベルギーとの2戦では、3トップが受けたパス数はどちらも17.5%と2割にも到達していません。当初想定していたプランはポット1のチームを相手にすると実行が難しかったと言えそうです」

 庄司氏が語るように、特にブラジル戦の前半はまさしく「格の違い」を見せつけられたような試合となった。序盤に2点を奪われ、なかなかボールを前に運べず、ペナルティエリア付近まで前進したかと思えばそこからボールを奪われてカウンターから3失点目も喫してしまった。庄司氏はこの3失点目が特に印象的だったと語っている。

「ブラジル戦の3失点目はとても残念でした。というのも、2013年のコンフェデレーションズカップのブラジル戦でパウリーニョに決められたゴールとよく似ていたからです。クロスが飛んできたコースがディフェンスラインの手前か後方かという違いはあるのですが、問題は同じようなところにあると思います。

 クロスが上がるときに、ペナルティエリア内にいる日本の選手は一直線になっています。日本のDFが一直線になっているということは、クロスを上げる選手の視野から考えると、極端な言い方をすればDF1人分のパスコースしかなくなっていないんですよ。

 だからクロスを上げる選手からすれば、ボールを通すのが楽なんです。クロスを受ける側からしても、DFラインからずれたポジションを取っていればボールを受けやすいはずです。日本の守備陣は人数こそいたものの、守っているエリアは狭かった。4年間経っても、選手が変わっても、同じような失点をしてしまったのは残念ですね」

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