問われる”勝負師”ハリルホジッチの手腕。リッピの理詰めの采配を崩すには
しかし、後半スタートから3バックに変更して守備を修正すると、韓国の攻撃の勢いは止んだ。そこから頃合いを見計らったかのように長身FWのジャオ・ジーを投入して、後半から左サイドに入ったリー・シュエポンがユー・ダーバオ、ジャオ・ジー目がけて積極的にクロスを上げる形で攻勢をかけ、終盤の73分には180cmの大型MFイン・ホンボーも投入。その3分後、リー・シュエポンのクロスにユー・ダーバオが合わせて同点に追いついている。
そうした采配は“マジック”という類いではないが、理詰めの計算に基づいているようで、経験に裏打ちされた豊富な引き出しから的確なシステム変更や交代カードを切ってくる。旧来の知人であり「尊敬している」と語るハリルホジッチ監督もリッピ監督の手腕をよくわかっているはずだが、スタートの段階で日本の戦い方がある程度ハマったとしても、そのままゲームを運べると思うのは危険ということだ。
無論、リッピ監督の采配に翻弄されないように、ハーフタイムの指示や交代カードで処方箋を与えていくのはハリルホジッチ監督だ。対人能力に定評のある左サイドバック・山本脩斗の起用や空中戦に自信を持つ植田直通を右サイドバックでも試すなど、試合前から高さ対策に余念がないが、さらに試合中の選択が勝負のカギを握る。
国内組の慣れないメンバーで、北朝鮮戦から中2日という事情から戦術面だけでなく、コンディションも考えてスタメンや交代カードを決断していかなければならない。それでもハリルホジッチ監督の勝負師としての手腕の見せどころであり、ここで失敗すれば起用した選手だけでなく指揮官の信頼も揺らぎかねない。優勝に向けた大事な試合であると同時に、ハリルホジッチ監督の試金石になる一戦だ。
(取材・文:河治良幸)
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