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「偽SB」の先駆者。現代最高のマルチロール、ダビド・アラバの傑出した才能【西部の目】

サイドバックとしてプレーしながら、サイドを駆け上がるだけではなく、インサイドに入ってゲームメイクにも絡む。「偽SB」と呼ばれることもあるこのプレースタイルの先駆者のなった選手がバイエルン・ミュンヘンのダビド・アラバだ。真のオールラウンダーとも言えるこの役割を果たすために必要な能力は、どのようなものだろうか。(文:西部謙司)

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

偽サイドバックは真のオールラウンダー

バイエルン・ミュンヘンのダビド・アラバ
バイエルン・ミュンヘンのダビド・アラバ【写真:Getty Images】

 ペップ・グアルディオラがバイエルン・ミュンヘンの監督に就任した2013年、ダビド・アラバはすでに不動の左サイドバックだった。もともとはMFだったのをSBにコンバートされてポジションをつかんでいた。この時点でのアラバはまだ攻撃力のあるSBにすぎない。変わったのはペップが来てからだった。

 アラバはペップのシステムで「偽SB」になる。タッチライン際に開くのではなく、中央寄りにポジションをとった。さらに中盤から前線へダイナミックに動いてチャンスを作り、自らも得点する。SBのリベロ化だった。

 グアルディオラ監督2年目には、3バックの左を担当、さらにプレーの幅を広げる。3年目は4バックに戻したので再び偽SBに。このときは右のフィリップ・ラームも偽SBになっていた。ペップがシティへ去った後、アラバは元の普通のSBに戻ったが、オールラウンドなポジショニングは“アラバ・ロール”ともいうべき新境地だった。

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