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日本代表 6年前

【識者の眼】柴崎岳の創造性がハリルJを導くか。流れを支配する多彩なセンス

text by 河治良幸 photo by Getty Images

相手を自分たちの流れに引き込むゲームメイク

 ウクライナに対し、柴崎は基本的には相手の裏を狙うプレーをイメージする。鹿島アントラーズ時代はボランチのポジションからそうしたパスを出す側だったが、所属するスペイン1部のヘタフェではトップ下あるいは2トップのやや下がり目のポジションを担うことが多く、中盤から縦パスを引き出してアクセントになるプレーが多い。ただ、そうしたボールを要求するタイミングの妙はパサーとして培ったセンスが生きている。

「簡単に1、2本のパスで崩せるのであれば、それで十分だと思いますし、相手が引けば自分たちの持てるスペースも広がる。それは試合でしか判断できないですけど、自分たちが試合に入った時に相手がどういう風に入ってくるのか、どういう守備をするのかをしっかり見極めて、やる必要がある」

 ウクライナは[4-1-4-1]のためアンカーのタラス・ステパネンコ(シャフタール・ドネツク)が柴崎をチェックする構図になるが、前後左右に動いてボールを受けることで、マーカーを引きつけ、空いたスペースに山口蛍が攻め上がる。あるいは左サイドの原口元気が中央に流れて絡むスペースを提供することができる。

 右サイドで先発が見込まれる本田圭佑も中央に流れる傾向の強い選手だが、柴崎が中央で起点になれていれば、本田も基本は右サイドに張り、そこから機を見てインサイドで柴崎と絡むチャンスメイクもより効果的になる。左サイドに宇佐美貴史が投入されれば、杉本健勇とともに、アンダー世代から一緒にプレーしてきたトリオによる崩しのアクションが見られるかもしれない。

 柴崎は正確なパスワークや広い視野、シュート力など多彩な特長を持つが、流れを作るゲームメーカーとしてのセンスこそがスペシャリティとなっている。試合の流れに応じてポジショニングやパスの長短などを変え、自分たちを有利な状態に引き込むことができる選手だ。そうした持ち味が中盤でボールを捌くボランチでは分かりやすかったが、攻撃的なポジションでも発揮することも可能だろう。

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