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日本代表 6年前

ハリル流の限界? 「デュエル」で勝てず「縦に速く」で崩せず。このままではミラクルも起きない

text by 元川悦子 photo by Getty Images

必要なのは“ハリル流”の否定? このままでは最悪の結末も…

長友
過去2大会ワールドカップに出場しているDF長友佑都は日本の厳しい現実を指摘する【写真:Getty Images】

 攻撃に関しても、マリとウクライナとの2試合でハッキリしたのは、タテに速い攻めだけではゴールをこじ開けられないという事実だ。ハイラインを保つウクライナ相手ならもっと背後を取れるのではないかという期待もあったが、ラキツキーら守備陣は能力が高く、簡単にスペースを与えてはくれなかった。

 結果として日本のアタッカー陣は走らされ、体力を消耗させられるばかりだった。槙野も「杉本(健勇=C大阪)選手も途中でガス欠してしまったけど、彼の仕事は守備じゃなくて攻撃なのに、間違いなく守備に力を注ぎこんでしまった」と大型FWを庇ったが、それは本田や柴崎にも少なからず見られた点だ。最後までで無尽蔵のエネルギーで走り続けていたのは原口くらい。その原口も肝心のゴール前でフィニッシュの迫力を出せなかった。

 だからこそ、日本はもっとボールを保持する時間帯を増やす必要がある。

「ある程度は保持するというオプションがないと、『裏蹴りました、裏抜けました、相手に取られます、相手にポゼッションされます、守備で疲労します、ボール取った時に精度が落ちる、ゴール前に入っていく選手が少なくなる』という負のスパイラルに陥る」と長友が厳しい表情で言えば、槙野も「後ろの選手を含めて奪った後のボールポゼッション率を高める、勇気を持ってボールを動かすというところをやらないといけない」も語気を強めたが、攻撃陣はよりそういう意識を強めているはずだ。

 これは、見方によっては“ハリル流”の否定になるかもしれない。実際、指揮官はこの日も「ボールを持ったら、攻撃のところで瞬発力、スピード、リズムの変化、速いボール回し、前に向かう動きといったものが必要だ。今日は引いてもらう動き、相手ゴールに背を向けた動きが多すぎた」と苦言を呈していたが、戦い方のバリエーションを増やさなければ最悪の結末を迎える恐れも否定できないのだ。

 今回の約10日間で選手同士は年齢に関係なくしっかりとコミュニケーションを取ったという。その意思統一の成果をどう本番につなげていくのかが肝心だ。この2連戦でチームを去る者もいるだろうが、ここで積み上げたことを絶対にムダにしてはいけない。

 マリとウクライナ相手に1分1敗という結果に終わったことの意味を指揮官含めて全員が今一度、真剣に考えること。それをせずして、日本のロシアでのミラクルはありえない。

(取材・文:元川悦子【リエージュ】)

【了】

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