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“バケモン”サラー、躍動の理由。ゲーゲンプレスがより凶悪に。リバプールが突いたローマの盲点

text by 神尾光臣 photo by Getty Images

ローマを修復不能に陥らせたゲーゲンプレス

 こうなるとローマは前に出ざるを得なくなり、つまりは裏のスペースをがっつりと開けることになる。さらにCFのロベルト・フィルミーノもCBを釣り出すのがうまく、ただでさえ脇にスペースを空ける3バックの連携を不安定なものにする。

 47分、フィルミーノは縦一本のカウンターでボールを運んだと思えば、中央へ繊細なスルーパス。そこには右サイドからサラーが鋭角に走り込む。マークについていたファン・ジェズスはあっさりと振り切られ、シュートを決められた。

 後半に入っても、ローマはひたすらサラーにやられる。ボールを繋ごうとすればプレスを掛けられ、攻め込めば縦にロングボールを放り込まれ、ファン・ジェズスはあっという間にサラーとの1対1を作られる。与えたスペースは広大で、そうなるともはや止めようがない。縦を破られ、マネやフィルミーノのゴールをお膳立てされた。

 それにしてもローマにとって脅威となったのは正にリバプールのゲーゲンプレス、つまり守備から攻撃への切り替えを不可能にさせるボール奪取の早さだ。ローマの守備陣は敵の前線の選手にプレスを掛け、ボールを奪う。しかしその直後、抜かれた選手は即座に頭を切り替え、背後を完全に取られる前に体を寄せ、ボールを奪い返すのだ。

 相手を抜き、数的優位を作った局面をローマは無効にされるだけでなく、裏のスペースに3人の俊足のFWが走ってくる。極めて対応が難しくなっていた。

 これだけの激しさ、強度で前線からボールを刈り、また数秒以内に奪い返しに来るチームはセリエAには存在しない。試合開始からゲームをコントロールし、シュートにも行けていたローマだったが、リバプールが20分過ぎからプレスの強度を高めたら対応できなくなった。リズムの違いに戸惑い、修正が不可能になっていたのは見て取れた。

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