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代表 6年前

“ブッフォンの正統後継者”、シュチェスニー。日本に立ち塞がる世界指折りの守護神【W杯 日本を襲う猛獣たち】

シリーズ:W杯 日本を襲う猛獣たち text by 神尾光臣 photo by Getty Images

眠れる才能を呼び覚ました名コーチ

 こうしてベンチ暮らしが主となってしまったシュチェスニーだが、さらにクラブはシーズン後にペトル・チェフの獲得まで決めてしまった。こうなるともはや、新天地を探すほかはない。高齢となったモルガン・デ・サンクティスの他にGKを探していたローマが手を挙げ、7月に移籍が決まった。

「いずれロンドンに戻るつもりでいたから、イタリア語もそれほど一生懸命には勉強しなかった」とシュチェスニーはのちにイタリアの地元紙に述懐している。ただそんな彼は、そのイタリアでGKとしての技術、戦術を磨かれる。

 数々の名キーパーを輩出したイタリアのサッカー界には確固たる指導ノウハウがあるが、シュチェスニーはそれを吸収し、本人ですら想定外だったかもしれないような成長を遂げるのだった。

 当時ローマには、グイド・ナンニというGKコーチがいた。クラブには2010年から加入し歴代の監督に仕えていたが、この人がシュチェスニーを再評価。「イタリア語は一生懸命勉強しなかった」とは言いながら、トレーニングに必要な用語はすぐに学習して練習に臨んできたという彼はすぐに気に入られた。

 そしてイングランドで課題とされたキックについても、「精度そのものはピルロのようだ」と賛辞を与えた。問題は、それを正しく使えていなかったのである。

 その課題が、ローマで施された練習で解決を得た。相手を綿密に研究した上で、戦術上の対策を練習メニューの中に落とし込んでトレーニングを積むイタリアでは、蹴るべきタイミングや場所についてもより細かい指導を受けた。

 鍛えられたのは、当然キックだけではない。戦術練習を通してDFラインとの連係も向上し、味方に任せるべき場面では無理に飛び出さないなどの判断力も向上した。

 さらに、自身の技術もそうだ。反応力に頼らず、低めのシュートに対しても体の正面で迎えるように向上。飛び出しについても、冷静にタイミングを図ってボールにアタックできるようになった。

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