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大迫勇也の価値と課題。『2秒』を生み出す図抜けた能力、決定機で揺れないゴールネット【西部の目/ロシアW杯】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

課題は決定力

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大迫はゴールを奪える。だが、ここという決定機に決める印象は薄い【写真:Getty Images】

 高校選手権のスーパースター、大迫は鹿島アントラーズとプロ契約した。鹿島の先輩である柳沢敦とはいくつかの共通点がある。

 大迫と柳沢は十代の時点ですでにプロでやれる才能を持っていた。2人ともポストプレーが上手く、点もよくとっていた。柳沢のほうがよりオールラウンドだったが、どちらも万能型のFWといっていいだろう。

 最近、2002年ワールドカップの試合を見返したとき、柳沢の身体能力が特別だったと改めて思った。かなり単調な縦へのロングボールをベルギーやロシアの長身DFと競り合って一歩も引かない。あの攻撃で何とか成立していたのは柳沢の能力があったからだ。マークを外す動き、裏をとるセンスも素晴らしい。アシストも上手かった。ただ、柳沢はワールドカップ2大会に出場して1点もとっていない。

 大迫はこの点では柳沢に似なくていいところまで似ている。2人とも決してシュートが下手なわけではない。大迫のパワーのあるシュートは柳沢にはなかった長所である。しかし、あれだけ何でもできるのに不思議なぐらい決定機で決まらない。点をとっていないわけではないのだが、ここという決定機に決める印象が薄い。

 もっとも世界的なスーパースターでも、すべてのチャンスを決めているわけではない。ただ、得点を量産するストライカーたちと大迫の間に何らかの差があるのだと思う。

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