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代表 6年前

韓国が痛感させられた世界との差。唯一の武器メンタルまでも…残す可能性はドイツ戦の奇跡【ロシアW杯】

text by キム・ドンヒョン photo by Getty Images

狙うはスピードの活性化、しかし予期せぬ失点がプランを崩す

 この布陣にした理由は簡単だった。全員、前線でとにかく走れる選手が揃った。前からプレスをかけられるプレーヤーであるのはもちろん、裏にちょっとしたスペースが出来た時、パス一本に反応できる選手たちがずらり。シン監督の狙いはここにあった。スウェーデン戦ではうまくできなかった韓国の得意なカウンターを積極的に狙う作戦だった。タフというキーワードにふさわしい選択だった。

 試合に入るとやはりこの前線がスウェーデン戦より機能した。細かい作戦や攻撃戦術、例えば縦へのパスがソン・フンミンに入った時、オフ・ザ・ボールになっている選手の動き方などは確かに整えられていなかったが、スピードを活かしたプレーは活性化された。シュートにも積極性が見える。もしかして、という希望がもたれる時間に入った。

 だがこれは序盤の夢に過ぎなかった。メキシコは小刻みにパスを交わし、韓国の空いたスペースをうまくコントロールした。そして前半中盤、アンドレアス・グアルダードのクロスにチャン・ヒョンスがまさかのハンド。スライディングタックルをする中で腕がコンロールできない状態だったとはいえ、軽率なタックルだった。韓国はPKを献上、カルロス・ベラに先制ゴールを許してしまう。

 ここから韓国のプランはより不透明になった。守備ラインは失点後それこそグロッキー状態。さらなる失点を重ねてもおかしくない危ない場面は何度もあった。一方の攻撃陣もまさに大混乱。ソン・フンミンやファン・ヒチャン、そしてムン・ソンミンのスピードはメキシコのDF陣をはるかに上回っていたものの、これを生かすパスが出ない。操られるべきコマが全く動けていない印象が強かった。

 結局このプランの呆気なさが2失点目につながる。キ・ソンヨンが中盤でボールを取られるとイルビング・ロサーノが俊敏にボックス近くまでボールを運び、最後にはチチャリートが冷静にゴール。キ・ソンヨンは明らかにふくらはぎを蹴られていたが、これはファウルにはならず。ボールを運んでいるロサーノをコントロールできず失点になってしまった。

 それでも韓国は力を振り絞った。最後の最後に、ソン・フンミンが自力で打開した。後半終了間際、強烈な左足のミドルシュートで相手のゴールを突き刺さる。しかし勝敗の行方を変えることはできなかった。

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