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日本代表 6年前

日本の戦術レベルは高かったのか? 問題は“逆転”にあらず。課題残した2-0からの戦い【検証・西野J<3>/ロシアW杯】

シリーズ:検証・西野J text by 河治良幸 photo by Getty Images

できなかったオプション作り

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西野朗監督【写真:Getty Images】

 西野監督が本当の意味で頼りにしたのは指揮官が与えた大枠の中で自分たちの中でバランスやコンビネーションを作り上げていきながら、同じメンバーの中である程度の対戦相手の特徴や状況変化に対応していける自己解決力だった。

 もちろんセネガル、ポーランド、さらに決勝トーナメントで戦うベルギーのスカウティングはしていたに違いないが、そうした相手に応じてやり方を変えるのではなく、同じ形、布陣の中で応用していく。

 それは一見して“自分たちのサッカー”と呼ばれた4年前と変わっていないようにイメージされやすいが、当時とは選手の経験が異なり、アギーレ、ハリルホジッチのもとで学んだベースも積み重なる形で、西野監督もそれらのベースを壊すことなく、守備の数的優位やクイックネスの生かし方など、選手と話し合いながら自分なりのアイデアを加えて最短距離で1つのチームを作り上げたことは評価に値する。

 しかしながら、オプション作りの部分はおそらくほとんどできないままで、試合展開や相手の変化に応じて投入するカードを十分に練っておくこともできなかったと考えられる。

 ベルギーが終盤にフェライニやシャドリを投入してサイドからのハイボールを増やしてくることは彼らのこれまでの戦い方から想定できることだが、では例えば植田直通を入れてゴール前の競り合いの強度を高めれば解決なのかと言えばそうではない。

 ただ、そういう対策を実戦レベルでやれるようにしておかなければピッチ内の選手のソフトの変化だけでは解決できない。ラインの高さを変えるとか、カウンターの意識を強めるといった1つのベースの中で調整できる範囲を超えてしまうところでは状況に適した選手交代やフォーメーションの変更、戦術メカニズムの転換といったハードを交換していくことも重要になる。

 一般的に“プランB”と呼ばれるものだが、相手に応じて“プランC”“プランD”ぐらい持っておかないと、あらゆる事態に対処してはいけない。

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