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Jリーグ 6年前

G大阪に現れた「今野の後継者」。ベンチ入りすら未経験、宮本新監督が高宇洋を抜擢した理由

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

ベンチ入りすら未経験。高を抜擢した理由

 慌てて荷物を整えて、25日の午前中に大阪へとUターン。新体制のもとで同日の夕方から始動したトップチームに合流した高は、完全非公開で行われた練習中に閃くものがあったという。

「スタメン組でプレーしたので、自分のなかで『そういうことか』と思いました」

 宮本監督から直接言葉はかけられていない。それでも、練習中に与えられた指示を聞くだけで、ホームのパナソニックスタジアム吹田に鹿島アントラーズを迎える、3日後の明治安田生命J1リーグ第18節で念願のJ1デビューを、それも先発で飾れると確信できた。

 配置されたポジションはボランチ。38歳のレジェンド、遠藤保仁とのコンビでチームの心臓を担う。高鳴る胸の鼓動を静めながら、尊敬の念を込めて宮本監督を「ツネさん」と呼ぶ高は、自分に与えられる仕事を具体的に思い描いていた。

「ツネさんからは『守備の部分を期待している』と言われていたので。僕もこの半年間、トップチームの試合に出られずにスタンドから見ていたときに、自分がもし出ていたら『ここは距離を詰める』とか『ここは守備を絞る』とイメージしてきました。実際にトップチームの練習でもできていたので、それを実際にピッチで発揮しようと思いました」

 果たして、宮本は初采配を振るったアントラーズ戦のピッチへ、高を先発として送り出した。J1はもちろんのこと、YBCルヴァンカップや天皇杯全日本サッカー選手権でもベンチ入りすら経験していない高を抜擢した理由を、41歳の指揮官は試合後にこう明かしている。

「前半戦の戦いを見ているなかで、中盤の守備が改善点のひとつに挙げられると思っていました。高にはJ3でそういう役割を与えていましたし、実際にしっかりとしたパフォーマンスを発揮してくれた。J1は初めてでしたし、最初は緊張感があったと思いますが、守備面でボールをかすめ取るような動きを前半から見せてくれたし、時間が進むなかで後半には攻撃面でもよくなった。十分に期待に応えてくれたと思っています」

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