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Jリーグ 6年前

G大阪に現れた「今野の後継者」。ベンチ入りすら未経験、宮本新監督が高宇洋を抜擢した理由

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

高が語る「宮本恒靖監督」

 しかも、70分に生まれた米倉の同点ゴールは、高の頑張りから生まれている。右サイドでこぼれ球に誰よりも早く反応し、スライディングしながらMF倉田秋に預けられたボールが米倉へわたり、右足から放たれたクロスが幸運にも相手GKクォン・スンテの頭上を越えてゴールへ吸い込まれた。

「さすがに狙った、と言うのは恥ずかしいです。あれはクロスです」

 今シーズン初ゴールに米倉が照れ笑いを繰り返せば、泥臭いプレーをゴールにつなげた高は、自分の存在価値がそこにあるとばかりに胸を張った。

「自分の目の前に、足を伸ばせば取れる感じでボールが来たので。ルーズボールにおける球際の激しさは自分の長所でもありますし、絶対に相手ボールにしちゃいけないと思いました」

 中国代表MFとして活躍した高升(こう・しょう)さんと日本人の母親との間に生まれた高は、中学を卒業すると川崎フロンターレU-18ではなく、高校サッカー独特の厳しさを求めて千葉県の強豪・市立船橋へ入学。3年次には攻撃的MFからボランチへコンバートされる。

 これがサッカー人生におけるターニングポイントとなった。インターハイ優勝を勲章として、複数のオファーが届いたなかでガンバを選択。かつてスーパーゴールに心を震わせた宮本監督へ対して抱いていた、冷静沈着でスマートなイメージは、いい意味で180度覆されたと苦笑いしたことがある。

「思っていたよりもすごく熱いというか、勝利に対して本当に貪欲で、スカウティングや試合前のビデオ分析、相手選手の特徴などでも非常に細かく言ってくれますし、(通常の)練習だけでなく、自主練習でも個々の課題についてしっかりと言ってくれるので」

 宮本監督もまた、U-23チームを率いながら高に大いなる可能性を見出していた。トップチームの長谷川健太監督(現FC東京監督)の方針もあり、U-23チームが完全に切り離された昨シーズン。芝生の保護を理由に万博記念公園内の練習場も使用できず、週末のJ3へ人数をそろえるのにも四苦八苦したなかで、高と同じく高卒ルーキーの高江麗央をボランチで起用し続けた。

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