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Jリーグ 6年前

G大阪に現れた「今野の後継者」。ベンチ入りすら未経験、宮本新監督が高宇洋を抜擢した理由

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

「いまでは『自分が生きていくのはこれだ』と感じています」

今野泰幸
高宇洋が憧れと語る今野泰幸。彼のようなスタイルを目指したいという【写真:Getty Images】

 後半戦からは高にゲームキャプテンを任せ、プレーに責任感を伴わせてきた。もっとも、ここでも宮本監督は直接説明をしていない。指揮官の無言のメッセージだったと高は振り返る。

「試合になると、自分のロッカーの前にキャプテンマークが置かれているんです。自分は中盤の選手ですし、チームを引き締めるという意味で『声をかけ続けるところも期待している』と、昨シーズンから監督にはずっと言われてきました」

 ボランチにコンバートされて以来、高は今野泰幸を目標に据えてきた。相手のボールホルダーへアプローチする速さ。ファウルなしで、それでいて激しいボール奪取術。攻撃面で発揮される意外性。ピッチを離れた部分でも今野の考え方を吸収できるように、今春のキャンプではあえて同部屋とした。

「本当に自分は変わりましたね。いまでは『自分が生きていくのはこれだ』と感じています」

 今では守備への自信を宿し、今野の後継者たる可能性を身長172cm体重68kgの体に脈打たせる高に、宮本監督はピッチ外でも英才教育を施してきた。高のプレーシーンだけを抽出したDVDをわざわざ作成し、個人ミーティングを介して課題を修正したのも一度や二度ではない。

 今年1月に35歳になった今野は昨シーズンから故障の連鎖に苦しみ、今シーズンに至っては4試合にしか出場していない。後継者としてガンバは井手口陽介を育ててきたが海外志向が強く、今年1月にはイングランド・チャンピオンシップ(2部相当)のリーズ・ユナイテッドへ新天地を求めた。

 いつか必ず高の存在が必要になる。若手を育てながら勝つことを求められるU-23チームを率いながら、宮本監督はこんな青写真を描いていたはずだ。そして、火中の栗を拾う形で、人生の設計図を早めてトップチーム監督に就任した瞬間に、高のプレーを介して明確なメッセージをチームへ伝えた。

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