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日本代表 6年前

「日本一いじられる監督」森保流マネジメントの極意。広島時代の教え子が感じる継続と変化

text by 舩木渉 photo by Wataru Funaki

「日本一いじられる監督」の指導法

 アジア大会のU-21日本代表メンバーには、広島時代の森保監督をよく知る2人の選手が入っている。プロ入りした2016年から約1年半にわたって指導を受けたMF長沼洋一と、昨年夏まで約半年間ともに時間を過ごしたMF松本泰志である。

 彼らは森保流の指導法について、「ミスを恐れない」という共通したキーワードを口にした。

 長沼は「ミスしても続けるというところが、森保さんがいた頃の優勝した広島にはありました。ミスしても全員がカバーする。1人のミスをみんなでカバーすることができていた。ミスを恐れずにもっともっとチャレンジして、ミスをしたら切り替えてみんなが他の人のためにカバーしていくことを、一番強く言っていました」と、当時を振り返る。そして「広島の時ほど、こうしろ、ああしろみたいなことはないですし、選手によって色が出ていると思う」という変化も感じていた。

 一方、松本は「日本一いじられる監督」と口にした恩師に「僕はいじれないです(笑)」と恐縮していたが、「守備とか球際とかに関してはすごく厳しい人。森保監督からは『ミスを恐れないこと』とよく言われるので、そういう面ではみんながチャレンジしやすい環境にはあるのかなと思います。試合が始まる前も、終わった後も、いろいろな人とコミュニケーションをとっているのも見られるし、そういう面では1人ひとりとの距離がすごく近いです」と、その指導の効果を実感している。森保監督のチーム作りは選手たちとの共同作業なのである。

 そのうえで「2個、3個先のことを考えてプレーする」ことを松本は意識している。これも森保監督が広島に植えつけたメンタリティの1つで、いまでもキャプテンの青山敏弘らによってチームの雰囲気作りから考え方の醸成までが脈々とクラブに受け継がれているという。

 アジア大会は決勝トーナメントに入って雰囲気が変わり始めた。試合のレベルた一気に上がり、グループリーグで日本に勝利したベトナムに対し、バーレーンが最後の最後まで食い下がるなど、各国のモチベーションもこれまでとは全く違う。

 もちろんマレーシアも例外ではないだろう。グループリーグで韓国に勝利した自信とともに、タイトル獲得への意欲をプラスして日本に襲いかかってくる。チーム全体として警戒すべきは、相手のウィークポイントを執拗に狙う強烈なカウンターだ。森保監督も「前線の選手にはスピードもありますし、個でも突破の能力を持っていますし、サイドにも推進力を持っている選手がいて速攻は気をつけなければいけない」と気を引き締める。

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