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代表 6年前

新たな主砲、エムバペと「真の中枢機関」グリーズマン。世界王者が見せた未知なる伸びしろ

text by 小川由紀子 photo by Getty Images

堅実なW杯から一転、攻撃マインドを旺盛に

 個人的には、自分のところに来た格好のチャンスで決められないというのはまた別の話だと思っている。実際W杯でも数々のチャンスを彼は逃した(試合に勝ったので戦犯扱いされることはなかったが…)。フランス代表の歴代トップスコアラーであり、アーセナルのレジェンド、ティエリ・アンリがその昔「エースがジルーでは優勝できない」と言っていたのはそういう意味だろう。

 9番の選手は孤立させられてボールに触れないこともある。そんな展開で、得点に絡めなくても他のことで貢献する、という姿勢は立派だが、シュートチャンスがあったのに外しまくるというのはストライカーとしては力不足だと感じる。

 もちろん一番ゴールを決めたがっていたのは本人だ。ドイツ戦でも惜しいチャンスを逃し、「またゴールの流れをとり戻したい」と悔しげに話していた。オランダ戦での勝利につながるこの決勝点は、ジルー本人、そして彼を信頼しているチームのためにもポジティブな材料だった。

 チーム全体としては、過酷なW杯を経て一体感やオートマチズムが熟成し、成熟度はアップしていた印象だったが、よりオープンなゲームを展開して攻撃マインドが旺盛だった分、守備では、カウンターで戻りが遅れたり、サイドで抜かれたり、相手が容易にパスを通せるコースを開けっ放しにする、といった場面もあって、とくにドイツ戦ではたびたびピンチを招いた。

 GKアレオラの数々の好セーブがなければ、ゴールレスドローはなかっただろう。

 ボールポゼッションもドイツが6割と、ゲームをコントロールされた感じはあったが、オフェンシブに挑んだ中での手応えも感じた。その感触どおり、次のオランダ戦では開始直後からエムバペが右サイドをえぐってシュートを打つなど脅威を見せつけ、14分にはマテュイディの横クロスを押し込んで早々と先制。67分にはオランダのライアン・バベルに同点打を許したが、間を置かずに取り返して勝利をつかむことができた。

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