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Jリーグ 6年前

名古屋・前田直輝は「ウルトラマン」。残留争いで放つ輝き、23歳が持つ底知れぬ潜在能力

text by 藤江直人 photo by Getty Images for DAZN

松本・反町監督につけられたニックネーム

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松本山雅FC時代、反町康治監督から「ウルトラマン」というニックネームをつけられた【写真:Getty Images】

 2015シーズンを始動させてすぐに、反町監督は自らラブコールを送って獲得した前田に「ウルトラマン」というニックネームをつけた。

「試合の流れから消えている時間が多いから、すぐにカラータイマーが鳴ってしまうという意味を込めて、ウルトラマンと言ったんだよね」

 もっとも、ニックネームには別の意味合いも含まれていたはずだ。反町監督はJ1を戦った陣容を見渡しながら、日本代表に入れる潜在能力をもった選手として前田の名前をあげたことがある。

 そして、3シーズンぶりに松本へ復帰した今シーズン。J1復帰を目指す過程で届いた完全移籍でのオファーを前にして、前田はグランパスに新天地を求める決断を下した。果たして、人づてに聞いていた風間監督のスタイルに「本当に楽しくやれている」と笑顔を浮かべる。

「どうすればフリーになるのか、という点は常に意識していますけど、まだまだなのかなと思っています。体の切れという点でも、もっともっとコンディションを上げていかないと」

 風間監督が掲げるサッカーは、簡潔に説明すれば「ボールを止める、蹴る、動く」を絶え間なく繰り返して試合を支配すること。2016シーズンまで約5年間指揮した川崎フロンターレは「風間イズム」を継承・発展させて、昨シーズンのJ1を制して悲願の初タイトルを手にした。

 翻ってグランパスはどうか。身長192cm体重97kgのサイズを誇る元ブラジル代表FWジョーが最前線にいる関係で長目の縦パスも織り交ぜるものの、試合を支配する、という基本的なコンセプトはフロンターレと変わらない。

 そして、肝となる「フリーの定義」を含めた「風間イズム」の薫陶を受け、短期間で急激な成長を遂げたのが前田となる。北京五輪に臨んだU-23日本代表を率いた反町監督も高く評価した、ウルトラマンにも通じる潜在能力が解き放たれてきたと表現すればいいだろうか。

 グランパスは前田に加えて、夏の移籍市場で最終ラインに丸山祐市(FC東京)、中谷進之介(柏レイソル)、金井貢史(横浜F・マリノス)と出場機会を減少させていた主力を、ボランチにはフロンターレで不動のレギュラーを担ったエドゥアルド・ネットを獲得している。

 J2を戦った昨シーズンから風間監督のもとでプレーするMFガブリエル・シャビエルやDF宮原和也、MF小林裕紀、FW玉田圭司。このオフに加わった守護神ランゲラックとジョー。さらに5人の新戦力が融合したグランパスは、8連敗を含めて15戦連続勝ち星なしの泥沼にあえぎ、最下位に沈んだ前半戦とはまったく別のチームに生まれ変わった。

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