フットボールチャンネル

日本代表 6年前

別格の輝きを放つ安部裕葵。U-19日本の10番、“カシマイズム”の継承者として世界へ

text by 舩木渉 photo by Getty Images,AFC

アシストに込められた瞬時の判断

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の戦いも経験しながら、少数精鋭でローテーションする鹿島の貴重な攻撃のオプションとして大岩剛監督の信頼を確たるものにしつつある。昨年7月に行われたセビージャとの親善試合では、スペイン代表招集歴もあるDFセルヒオ・エスクデロに「違いを作れる選手だった」と称賛される才能の持ち主だ。

 ただ、エリート街道を歩んできた選手ではない。安部が初めて世代別代表に選ばれたのは昨年11月のAFC U-19選手権予選で、それまでは無名の若手の1人だった。中学時代は本田圭佑が運営に関わるS.T.FOOTBALL CLUBから広島県の瀬戸内高校に進学し、高校サッカー部でのプレーを経て鹿島でプロになった。

 隠れた才能だった若者は、右肩上がりの成長でU-19代表の10番を任されるまでになった。そして、まさにその背番号にふさわしい存在感でタイ戦の2アシスト。今大会前はコンディション調整に苦しんだものの、ここにきて調子を一気に上げてきている。

 宮代の1点目をアシストしたクロスは、安部の魅力が詰まったものだった。得意のドリブルでスピードに乗ると、“1人スルーパス”のような格好になり、一度左サイドの深い位置で相手選手に体を入れられてボールを奪われそうになる。そこで安部はもう一度ギアを入れ替え、強引に奪い返して突破。ペナルティエリア内まで侵入し、最後は低くて速いクロスをGKが弾いたところに宮代が詰めた。

「あれは“裏街道”したつもりじゃなかったんですよ。(東)俊希が斜めに走ると思っていました。そうしたら止まっちゃったので。だから行かなきゃ、と。でも、あそこを判断変えていけるというのは、自分のコンディションがいい証拠ですし、そういうので自分の体は動けるんだなというのを今日確認できた」

1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top