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Jリーグ 5年前

湘南のホープたちが勝ち取った初戴冠と制裁金の25倍。「ベストメンバー規定」を乗り越えた“最強チーム”に

text by 藤江直人 photo by Getty Images

指揮官が賛辞を送った最終ライン

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坂圭祐【写真:Getty Images】

 ベルマーレへの加入を決めるまでの経緯を振り返る坂は身長174cmと、センターバックとしては小柄と言わざるを得ない。それでもプロの世界に飛び込めたのは、他の選手にはないものをもっているからに他ならない。坂は「機動力だと思う」と自身の武器をあげながら、こんな言葉を紡いだ。

「自分は身長が低いので、バイアとの一番の差はそこかなと。あとは、プロになって一番意識しているのはポジショニング。監督にも入団当初からかなり口を酸っぱくして言われてきたことでもあり、いまでは普通の相手ならば勝てるという感じはありますけど、リーグ戦で空中戦をストロングポイントにする札幌の都倉選手やジェイ選手を相手にしたときはきついと感じたし、相手を簡単には飛ばせないポジションで競り合うことに関しては、もっともっと練習していくしかないと思っています」

 レイソルとの準決勝第2戦ではPK戦の4番手に指名され、外せば敗色濃厚となる状況でほぼど真ん中に成功させる。横浜F・マリノスとの決勝戦では、1トップのウーゴ・ヴィエイラと激しくマッチアップ。3本のシュートを放たれながらも決定的なそれは許さず、終了間際には途中出場のFW伊藤翔のシュートを右足でブロック。こぼれ球を拾ってセンターサークル付近まで攻め上がり、スタンドを沸かせた。

「ウーゴ選手はゴール前で上手さを発揮するので、変に飛び込むことなく、正面で対応しようと思った。ただ、シュートミスにも救われた部分もあるので、シュートを打たれたことに関しては反省材料だと思う。ブロックに関してはストロングであり、ベルマーレにおいては普通のプレーだと思っている。枠内にいいシュートを飛ばされたときは、周囲が怒り出す、という空気が練習の段階からあるので」

 優勝の余韻に浸ることなく、さらなる成長への課題を挙げる坂に曹監督も目を細める。坂に加えて身長178cmの右・山根視来、同180cmの左・大野和成と、決して上背があるとは言えない3人で形成された最終ラインへ、「この大会を通して本当に見事だった」と賛辞を送ることも忘れなかった。

「隙がなかったし、ラインを常に高く上げてリスクを冒しながらも相手の攻撃を遮断し、入れ替わることで攻撃への第一歩にもなっていた。大きくないとか、足が速くないとか、上手くないとか、誰が決めたのかわからないようなサッカーの原理原則にひとつの楔を打ち込めたと思う。小さくても何かでカバーすることで、チームのやり方のなかで生かす。指導者は常に工夫して、そういうものを生み出していかなければいけないと思ってきたなかで、非常に頼もしく見えた」

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