梅崎司、曺監督と流した涙の先に。31歳で湘南移籍の覚悟、取り戻した輝きが意味するもの

今季、YBCルヴァンカップ初制覇を果たした湘南ベルマーレ。その中心にはいつの日からか、梅崎司がいた。浦和レッズから今季加入したベテランは、ここ数年度重なる負傷などに悩まされていたが、湘南移籍とともに完全復活。かつての輝きを取り戻した今、梅崎は31歳で決断した挑戦が意味するものを自らに問う。(取材・文:藤江直人)

2018年11月30日(Fri)10時20分配信

text by 藤江直人 photo Getty Images
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指揮官の「復活させたい」思いに応え…

梅崎司
梅崎司は今季、浦和レッズから湘南ベルマーレへ移籍。YBCルヴァンカップ優勝に貢献した【写真:Getty Images】

 もしかすると、周囲には奇異な光景に映っていたかもしれない。昨年の師走。羽田空港の近くにあるホテル内だったが、ラウンジか、カフェだったかの記憶は少し曖昧になっている。それでも、大の男たちが人前で泣き始めたことだけは、照れ笑いする梅崎司の記憶にはっきりと刻まれている。

「そこまでボロ泣きはしていないんですけど。まあ、お互いに(泣いた)、という感じですね」

 当時の梅崎は、10年間所属してきた浦和レッズから契約延長のオファーを受けていた。そして、完全移籍のオファーを提示してきた湘南ベルマーレとの間で心が大きく揺れ動いていた。迎えたベルマーレとの初交渉の席で、曺貴裁(チョウ・キジェ)監督は「もったいない」と訴えかけてきた。

 梅崎はレッズがアジア王者として出場したFIFAクラブワールドカップを戦い終えて、UAEから帰国したばかりだった。一方の曺監督も年末恒例のヨーロッパ視察から、予定を急きょ早めて帰国していた。いまではこう思える。梅崎との交渉が入ったからではないか、と。

「お前のことを再生させたい。復活させたいんだ」

 曺監督は「もったいない」に続いて、万感の思いを込めた直球をど真ん中に投げ込んできた。それらを必死に受け止めた梅崎も、胸の奥底に秘めていた本音をわしづかみにされたと感じずにはいられなかった。交渉というよりは、心と心のぶつけ合い。気がついたときには、2人の目から涙がこぼれ落ちていた。

 昨季の梅崎は、リーグ戦で10試合、355分間の出場時間に終わっていた。先発はわずか3試合。10年ぶりに頂点に立ったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を含めて、後半の終盤において試合を締める役割を担った。レッズの勝利のために、ウイングバックの2番手に徹し続けた。

 もっとも、自分の体に問いかけてみれば、2016年8月に全治7ヶ月の大けがを負った左ひざに全く不安を感じなくなっていた。シーズンが開幕する直前に30歳になった。現役でプレーできる時間が確実に減ってきている状況で、胸中には対照的な思いがあらわれてきていた。

「年を取るたびにだんだん自分を押し殺して、チームのために徹することがすごく増えていました。チームに埋もれるというわけじゃないけど、レッズというクラブだからこそ、そのなかにいられることへの価値はすごく感じていましたけど、一方で『このままじゃダメだ』という思いもずっとありました。ここ数年、自分のなかで感じていた葛藤が、昨季はさらに強くなっていた。ポジション争いで勝負したい、と」

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