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Jリーグ 5年前

梅崎司、曺監督と流した涙の先に。31歳で湘南移籍の覚悟、取り戻した輝きが意味するもの

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「あきらめない」

 梅崎に続けと、56分にはMF菊地俊介もゴールを決める。レッズの反撃をFW興梠慎三の一発に抑えて、今季のホーム最終戦で5試合ぶりの白星をあげた。3試合連続で無得点が続いていたチームを、歯を食いしばってスプリントを仕掛け、技ありのゴールを挙げた梅崎が勇気づけた形となった。

 試合後の公式会見。梅崎のゴールの価値を問われた曺監督は「それ以上でも、それ以下でもなく『あきらめない』ということで表現できると思う」と込み上げてくる喜びを抑えるかのように、やや落ち着いた口調で持論を展開した。

「あきらめない気持ちをもっていれば、すべてにおいて必ず成功につながると僕は信じている。司がベルマーレというチームで、こういう感じでプレーしていると、昨年の同じ時期に想像していた人はおそらくほとんどいなかった。それを司が示せたということは、ウチにいる選手を含めた日本中のサッカー選手に対しても意味のあるものであり、レッズのサポーターの方々の胸を打つシーンだったとも思っています」

 何をあきらめなかったのか。答えは31歳にして成長することであり、よりゴールする確率を高めるチャレンジを選ぶことであり、かつての自分を上回るアグレッシブさを身にまとうこと――となるだろう。夏場以降の戦いでベルマーレをけん引してきた梅崎へ、指揮官はこんな言葉をかけている。

「ルヴァンカップで優勝できたのは、お前が来てくれたおかげだ」

 決勝で横浜F・マリノスを1-0で撃破し、クラブ名称が「湘南ベルマーレ」に変わった2000年以降で初めての、前身のベルマーレ平塚時代を含めれば1994年度の天皇杯を制して以来のタイトルを手にした直後のひとコマ。もっとも、こんなひと言をつけ加えることも曺監督は忘れなかった。

「残留がかかったここからの試合で、さらにお前の力が必要になる」

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