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Jリーグ 5年前

鳥栖が未来を賭けた「劇薬」と「伝説の夜」。社長の“ぶれない姿勢”がJ1残留の分岐点

text by 藤江直人 photo by Getty Images

怒号が飛び交った2度目のサポーターミーティング

フェルナンド・トーレス
F・トーレスらが加入したが、チーム状況はなかなか好転しなかった【写真:Getty Images】

 敵地カシマサッカースタジアムに乗り込んだ、1日の明治安田生命J1リーグ最終節。アジア王者を戴冠し、J1でも2位をうかがっていた鹿島アントラーズとの大一番をスコアレスドローで終え、他会場の結果に関係なくJ1残留を決めた直後の取材エリアで、竹原社長は偽らざる胸中を明かしている。

 今シーズンを振り返れば、サポーターミーティングは開幕直後の3月、そしてゴールデンウイーク中の5月6日に続く3度目の開催だった。いつどのようなタイミングで開催するのかは、特に定められていない。クラブ側が必要と判断したときに、公式ホームページ上で呼びかけていく。

 たとえば2度目のサポーターミーティングは、ホームに清水エスパルスを迎えた、明治安田生命J1リーグ第12節のキックオフ前にあえて開催している。おりしもサガンは7連敗を喫し、順位も暫定ながら最下位に沈むなど、文字通り泥沼のなかであえいでいた。

 スタジアム内にあるサガン・ドリームスの事務所前で約40分間対応した竹原社長に対して、もしJ2へ降格したらどうするのかと怒号が飛び交った。なかにはフィッカデンティ監督の解任だけでなく、2011年5月の就任以来、サガンの経営を拡大・発展させてきた竹原社長の辞任を求める声もあがった。

批判の矢面に立った竹原社長は、少しだけ歯車が狂っている、という理由で指揮官の解任を否定。そのうえで「私の辞任がベストの選択であれば、それを選択します」と不退転の覚悟を示しながら、危機的な状況を打開していく思いをこんな言葉に凝縮させている。

「背伸びをしてでも、しっかりした選手をこれでもか、というくらい補強する。安心していてください」

 その答えがすでに水面下で交渉を開始していた元スペイン代表のエースストライカー、フェルナンド・トーレスであり、常勝軍団アントラーズから電撃的に加入した元日本代表FWの金崎夢生だった。夏の移籍市場が開くとともに逆襲への陣容が整ったかに映ったが、チーム状態はなかなか好転しない。

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